なぜ布製マスク?背景に使い捨てマスクの青天井需要に応える困難さ
「全国で5000万あまりの世帯すべてを対象に日本郵政の全住所の配送システムを活用し、1住所あたり2枚ずつ配布することといたしました」
4月1日午後6時半ごろ。安倍首相が政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で突如打ち出したこの施策。マスク不足が続く中、今回打ち出された打開策がなぜ布マスクなのかという点について首相は次のように説明した。
「本日は私も着けておりますが、この布マスクは使い捨てではなく洗剤を使って洗うことで、再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効だと考えております」
一般的な使い捨ての不織布マスクと違い、布製マスクは洗って繰り返し使えることから、確保が必要なマスクの数を絞ることができるという。さらに安倍首相は会議の中で月7億枚を超えるマスク供給を行う見込みが立ったと説明し、政府関係者は布マスクを活用することで使い捨てマスクの需要が抑えられ、結果的に紙マスク自体が店頭に並びやすくなる効果を指摘している。
ただマスクの需要は、花粉症の時期というだけでも多い季節なのに、今や新型コロナウイルスにより青天井の需要となっている。約1億人の国民が毎日1枚新品の使い捨てマスクを使えば月に約30億が枚必要だ。現在の確保見込みのおよそ4倍であり、この確保は容易ではないというか、現実的ではない数字といえる。
そこで今回発表されたのが、全国で5000万枚余りの世帯全てを対象に、日本郵政の全住所配布のシステムを活用しての1住所あたり2枚ずつの布製マスク配布だったのだ。
町で見たマスクを買い求める行列と電車の中の景色
ただ、この布製マスクの配布については「助かる」という歓迎の声の一方で、様々な点で疑問を呈す声が続出している。1世帯2枚という点については、3人以上の世帯から戸惑いの声が出ている。
そしてそれ以上に大きいのが、布製マスクを使用したいと思う人が、圧倒的に少ないという現実だ。私は発表を受けて、地下鉄の車両1つをくまなく見て回ったが、2人の若者が黒色の“イマドキ布マスク” をつけていた以外、安倍首相が着用しているような普通の布製マスクをつけている人は1人もいなかった。
今回の布製マスク配布の発表をうけて、私の耳に届いたのは20~30代の複数の友人の、次のような声だった。
「やりたいことはわかるんだけどね、時代とのギャップが大きくて困惑する」
「最後に勝つのは“ダサい”だよ」
いくら布マスクがウイルスの拡散抑止に一定程度有効であっても、若年層にとっては“ダサイ”という感覚が最後に勝ってしまい、配布された布マスクを使うことはないという意味だ。こうした声は、ネット上にもあふれていて、「給食当番マスク」などと、小学生時代の微妙な記憶を伴って揶揄されている。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース