「帰っていいよ」と言われたあの頃 「女性初」捜査1課班長はいま

 門戸を開いてより優秀な人材に来てもらおうと、大阪府警は今夏、全国で初めて、女性警察官の採用で「共同試験」を実施する。地方の警察本部の試験を受けながら、都市部の警察を併願できる仕組み。広島県警の協力を得て、7月1日に受け付けを始める。

 大阪府警採用センター長の三谷千秋警視(57)は、捜査1課の班長など、府警内で「女性初」のキャリアを重ねてきた。女性警察官採用での導入を「大きな一歩」と話す。

 三谷さんが大阪府警の警察官になったのは1990年。その前に2年間、金融機関に勤めていた。「バブルがはじける直前で花形の職場。ただ今のように女性が働く時代ではなく、結婚や出産を機に先輩がどんどん辞めていくのを見た」

 自分は働き続けたいという思いを持ち、育休などの制度が充実している公務員を意識した。学生時代は少林寺拳法に打ち込み、体力に自信があった。「警察官になろうかなと。何かを守りたい、という崇高な思いまではなかったんです」

 警察学校で厳しさが身にしみた。分刻みで行動が決められ、追いつくのに精いっぱい。転職しただけに「後戻りはできない」との思いで必死だったという。

 最初の配属先は当時、男性は地域課(交番)、女性は交通課。三谷さんも交通だった。拳銃の貸与は男性のみ。大阪府警で女性も交番に配されて拳銃を持つようになるのはこの4年後で、全ての女性警察官への貸与は更に4年後の98年だった。

 三谷さんの希望は刑事になることだったが、まずは交通の仕事を覚えることから。署の刑事課に顔を見せたり、刑事の先輩に「どんな勉強をしたらいいか」と尋ねたりし、帰宅後に書類の書き方などを練習した。

 2年後、詐欺や汚職事件などを担当する捜査2課に配属され、念願の刑事になった。課に女性警察官は自分だけ。周囲の男性は女性と働いた経験も少なかった。残業があっても「今日は帰っていいよ」と言われる。「よかれと思ってのことでしょうが、『同じ警察官です』と思った。仕事で覚えなければならないこともあるし、同じように扱ってほしいな、というのはあった」

 女性の働く場は広がった。9…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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