新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が猛威をふるい、感染が急拡大する中、8日、年始の3連休が始まった。東京・浅草は昨年よりもにぎわったものの、感染拡大を不安視する声も。一方、感染者が急増する沖縄の繁華街は閑散とし、落胆の声が漏れた。
東京・浅草の仲見世通りは午前中から家族連れやカップルでにぎわっていた。マスクを外して食べ歩く人の姿もちらほら見られた。
千葉県船橋市の会社員女性(25)は、首都圏の感染者数が急増する状況に「もっと広がり外出しづらくなる前に」と知人とやってきた。「まだ外国ほど拡大していない。マスクや手洗いをしていれば、これくらいは大丈夫かな」。6歳の長女とやってきた東京都江戸川区のパート女性(37)も「感染者の伸びは気にはなるし、怖い」としつつ、「本番はまだこれから。せっかくだし今日までなら」と話した。
和菓子店「中富商店」の今の売り上げは、コロナ禍前の半分弱にまで戻ったという。社長の小笠原桃子さん(33)は「国内観光客はコロナに慣れてもうあまり気にしていないのかな」と話す。ただ、これまで品物をよく買ってくれた外国人観光客や修学旅行の団体客らはいまだにほぼ姿が見えない。「感染防止への意識が下がって感染が広がることで、元の浅草に戻れなくなるのは嫌だ」と話した。
土産店を営む女性店長(50)は「売り上げはコロナ禍前の9割減のまま」と肩を落とす。「完全に感染が収束しなきゃ、客層も購買力も元には戻らない。今、人出だけが減らずにまた感染が拡大すれば、同じ状態が続くだけ」と不安を隠さない。
別の土産店の女性従業員も「人が来なきゃ店が死んじゃう。でも、お客さんと顔を合わせると、自分も感染してしまうのではないかと怖くもなる。複雑な気持ちです」と打ち明けた。
福岡市最大の繁華街・天神も買い物客でにぎわった。天神中心部にある新天町商店街。入り口に通行人向けのアルコール消毒液が置かれていたが、利用する人はまばらで通り過ぎる人がほとんどだった。
ボトルに消毒液を補充していた警備員男性(73)によると、1年前に設置された当初は、1リットルのボトルが1日で空になることもあったが、今は1日で3分の1ほどしか減らないという。「それぞれのお店に置いてあるし、慣れもあると思う。人の流れも一時期と比べ5割増し。正月から緩んでいると感じる」
商店街にある「みよしの食堂」の女性店員(57)は「昨年と比べ、今年の正月のにぎわいはすごかった」と振り返る。人通りが戻ることに期待する一方で、変異株「オミクロン株」について「いつ重症化につながる変異株になるか分からない」と警戒する。「店も開けないといけないけど、変異株も心配」と、苦しい心の内を話した。
8日に3日連続の過去最多となる1759人の感染者が出た沖縄県。那覇市きっての繁華街、国際通りに立つ泡盛専門店の女性従業員(58)は「先週末よりもかなり減っています」と、まばらな人通りを見て肩を落とした。観光客や家族連れがちらほらと姿を見せるが、国際通りに並ぶ多くの店は閑散としていた。
昨年は9月末までの4カ月間、新型コロナウイルスの緊急事態宣言下にあった沖縄。観光客が激減した国際通りでは、多くの店が臨時休業を余儀なくされた。それでも緊急事態宣言の解除後は徐々に人出が戻り、年末年始は多くの客でにぎわったという。女性は「ようやく回復してきた矢先。またコロナで振り出しに戻された。このままだと、また緊急事態宣言が出されるのでは」とため息をついた。(山口啓太、吉田啓)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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