ラグビーの「多様性の中の統一」に共感
大賞になった「ONE TEAM」は、ラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)が掲げた言葉。ジョセフHCが国籍を問わず選手を招集した日本代表は、7か国15人の海外出身選手を含む31人がまさに「心を一つ」にして日本初開催となったW杯を戦い、予選4連勝で悲願の決勝トーナメント進出を果たした。
東京大学名誉教授の姜尚中氏は「今年は、一言で言うと『明』と『暗』がはっきりとした年だった」と指摘。「想定外の自然災害という『暗』もあったが、多くのファンがここまで活躍すると思わなかったラグビーによって『明』に変わった」とラグビー効果を語った。さらに「元号が令和に改まり、ラグビーの『多様性の中の統一』みたいなことに国民は共感したんじゃないか」と分析した。
一方で「全般的には弾けるような言葉がなかった」とも言及。その理由について、お笑い芸人が事務所を通さずに仕事をした「闇営業」問題を挙げ、「やや芸能界がパワーがなかったのではないか」と語った。
ラグビーに触れなかったのは、女優・エッセイストの室井滋氏と漫画家のやくみつる氏。「正直、今年の流行語大賞の印象は『ぬかるんでいる』」と切り出した室井氏は、2019年にたくさんの事件や事故、災害が相次いだことを踏まえ、「ニュースを見ていて、それを忘れる頃にもっとすごいニュースが出てきて、その前にどんな言葉が残ったのか忘れてしまうのが今年の特徴。今だったら『桜』と『高速シュレッダー』じゃないかと友人が言っていたが、それもしばらくしたら忘れられる言葉になるのかな」と目まぐるしくニュースが生まれる現代とメディア報道を独特の言葉で表現した。
やく氏は「新語・流行語大賞なので、流行語たり得なくとも新語をもっと押し出していいんじゃないか」との考えから、「候補にも上がっていなかった『おむすびコロリンクレーター』をねじ込んだ」と明かした。「案の定、世間が『聞いたことない』とざわついたが、これで逆にインプットしてもらえれば」とノミネートの意義を強調した。
「現代用語の基礎知識」編集長の大塚陽子氏は「昨年の『#MeToo』に続いて『#KuToo』という言葉が生まれたことが、男性女性にかかわらず、誰にとっても生きやすい社会への一歩になったと感じる。閉塞感やあきらめムードを感じる社会の中で『スマイリングシンデレラ/しぶこ』や『ONE TEAM』で明るいムードになった。つい言いたくなるような言葉が今年も生まれた印象がある」と講評を締めくくった。
(取材・文:具志堅浩二)
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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