天気予報を確認するように、新型コロナウイルスの感染者数の増減を気にして生活するようになってから、まもなく2年になる。連日数千人の感染が確認されることもあった都会に比べ、秋田は感染者数こそ少なかったものの、感染にまつわる真偽不明のうわさを今年もよく聞いた。うわさをする側がどこまでその悪意を自覚しているかは分からないが、うわさされた側の被害は深刻だ。
4月に取材した大仙市の自動車販売店では、「店の従業員がコロナになった」との誤ったうわさが独り歩きし、経営者の男性やその家族が苦しんでいた。
実際に感染者が出たのは、男性の店ではなく、男性の妹の勤め先だった。だが、うわさを信じた客が車の整備の予約をキャンセル。出入りの自動車メーカーの担当者は、この店に通っていることを理由に別の販売店への来店を断られた。うわさは妹の男女関係に対する誤った臆測に内容を変え、男性や家族は事実無根の中傷を受けた。
「田舎って怖いね」。一連の被害を聞いた関東地方に住む友人はそう言ったという。男性は「この広まり方は異常。だから、『田舎は何もないからうわさ話で盛り上がる』って馬鹿にされるんだと思う」と話した。
さまざまな意見を紹介する県庁のサイト「県民の声」には8月、感染をきっかけに誹謗(ひぼう)中傷されて仕事を辞めざるを得なくなり、県外に引っ越したという人からの投稿が寄せられた。現在は県外の政令指定都市に住んでいるというこの投稿者は「(移住先では)アパートの隣の人が感染したのか、スーパーのレジの人が感染したのか、わかるはずがないのが現実。恐ろしいことに、秋田はそれがわかってしまう」とつづり、「自分たちのうわさ話が、ウイルスと戦っている人を追い込み、回復後の社会生活さえ奪ってしまう可能性があることを自覚して頂きたい」と訴えていた。
始めは世間話のつもりでも…
躍起になって感染者を詮索(…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル