「微力だが、無力ではない」 学長たちの式辞、「ウクライナ」一色

 大学の卒業式のあいさつで、多くの学長がロシアによるウクライナ侵攻に言及している。緊迫した状況のなか巣立っていく卒業生たちに、理不尽な暴力への怒りを率直に伝え、自分事として考えて行動するよう求める学長も。世界が揺れるいま、大学のトップが発信するメッセージとは――。

 早稲田大学は、感染対策のため戸山キャンパス(東京)で2日間、計6回に分けて卒業式を設定した。学生本人のみの出席とし、家族らのために動画をライブ配信した。

 25日にあった政治経済学部などを対象とした式で田中愛治総長は「皆さんが今後、向き合う問題は正解がないものばかり」として、新型コロナ地球温暖化、格差・貧困とともに「ロシア政府指導者によるウクライナへの侵略と人権侵害の打開策」を挙げた。

 「ウクライナの人々が受けている人権侵害や殺戮(さつりく)に、言葉に表せないほどの義憤と悲しみがわく。私たち人類にとって、悲惨な状況を止める有効な手段が多くないという歯がゆさを感じる」と述べた。また、ウクライナ出身の留学生の心細さと、「どのように見られているか」を気にするロシアからの留学生の不安についても言及。それぞれの立場に置かれた人々を思いやって接する「しなやかな感性」の大切さを訴えた。

 東京大学の藤井輝夫総長も25日の卒業式で、国名は出さなかったものの、「理不尽な軍事侵攻は、誰も望んでいなかった破壊や悲劇、あたりまえの日常生活の喪失が広範に、また強引に引き起こされてしまう、世界秩序のもろさをあらわにした」と指摘。「厳しい対立状況のなかでも対話や交流の実践が果たす役割の大切さを改めて見つめ直し、大学が学術の実践を通じて、こうした非常時が強いるさまざまな不幸からの脱却に、いかに貢献できるか」が問われていると語った。

 「まかりまちがえば第3次世界大戦が起きるかもしれないというような出来事が、今も進行中だ」。そう述べたのは鎮西学院大学(長崎県諫早市)の学長を務める政治学者の姜尚中(カンサンジュン)氏だ。

 姜氏は12日の卒業式で「願…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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