「なぜ今なのか」。買収事件で一審有罪となった元法相の河井克行被告(58)が21日、控訴を取り下げ、懲役3年の実刑判決が確定した。買収事件をめぐる政治不信が根強い地元・広島の関係者からは河井被告を突き放し、タイミングを疑問視する声が相次いだ。
「もう何も関係ない。実刑確定はしょうがない」。河井被告の元後援会長の男性は取材に淡々と応じた。衆院議員を辞職する時は事前に連絡があったが、今回は報道で知ったという。
河井被告の元秘書の男性は「保釈も認められず、実刑確定は間違いないと思っていたので驚きはない」と語った。後援会の支部長だった70代の男性は、衆院選の公示2日後の発表に「多少なりとも与党にプラスになればという思いがあったのかもしれない」と思いを巡らせる。「これまで地元の有権者に直接の謝罪はなかった。心の底から反省してほしい」と話した。
河井被告から現金計約2900万円を受け取った地元議員ら100人全員について、検察は不起訴としたが、東京検察審査会に審査が申し立てられている。受領した議員への有権者の風当たりは今も強い。200万円を受け取った奥原信也広島県議(79)は「けじめがついたのは本人だけ。私たちはこれからも続くのだから、(控訴を)やめてもやめなくても関係ない」と語り、検察審査会の判断の行方に気をもむ。
活動自粛を続けるある広島市議は、実刑確定により検審の議決が早く出ると推測し、「『犯罪者』扱いされ、生殺し状態が続いている。どういう結果になろうと、早く私も区切りをつけたい」と胸中を吐露した。
自民党本部が河井夫妻側に提供した1億5千万円をめぐる疑惑も残ったままだ。広島市の市民団体「『河井疑惑』をただす会」の黒川冨秋事務局長(68)は言う。「刑が確定しても、買収資金の原資が解明されない限り、事件は終わらない」
河井被告の地盤だった衆院広島3区では、「政治とカネ」が選挙戦の争点の一つとなっている。各陣営からは説明責任を問う声が相次いだ。
公明党は前職の斉藤鉄夫国土交通相(69)を擁立している。田川寿一県本部代表は「当然の判断だが、謝罪だけでなく、県民にしっかりとした説明をするべきだ」と語った。
立憲新顔のライアン真由美氏(58)は「衆院選での自民党の印象を良くするためなのかと感じる。(党総裁でもある)岸田首相が、国民が納得できる説明をすべきだ」と話した。
維新新顔の瀬木寛親氏(57)は「潔い決断だが幕引きにしてはいけない」。受領した議員への刑事処分の必要性を主張し「それなくして金権政治との決別にはならない」と訴えた。
広島3区には無所属新顔の大山宏氏(73)、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」新顔の矢島秀平氏(29)、無所属新顔の玉田憲勲氏(64)も立候補している。(候補者の年齢は投開票日現在)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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