「心配する事有りません」「故郷方面には御障り有りませんか」。太平洋戦争の戦地から届いた「軍事郵便」のはがきなど約30通が、岩手県釜石市郷土資料館で14日から9月3日まで展示されている。
戦時下の軍事郵便は、戦地の兵隊の安否を知る唯一の手段だった。「検閲」の判が押されたはがきにしっかりとした字が並ぶ文面には、詳しい場所や現地の様子は書かれていない。しかし、病気を案じる家族に「心配なんか無用です」と報告したり、弟から届いた便りに「嬉(うれ)しく飛び立つ思いで二度三度繰り返して拝見いたしました」と喜んだりと、制限された中にも当時の感情がこもる。
ほかに戦死した長男の葬儀の日を知らせる便りや、釜石を襲った艦砲射撃後、後に首相になる鳩山一郎氏らが当時の市長にあてたお見舞いはがき、兵隊が描かれた絵はがきも。子どもたちに奨励された戦地の兵士に贈る激励文の書き方の教本なども展示されている。
郷土資料館の担当者は「SNSがなく書きたいことも書けなかった時代を想像しながら見てほしい」と話している。(東野真和)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル