いじめを受けた大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が自殺してから、11日で10年になる。事件がきっかけで、いじめの定義や調査の仕組みを定めたいじめ防止対策推進法が2013年に施行された。ただ、調査をめぐっては被害者側が再調査を求め、自殺といじめの因果関係が認められたり、提言不足を指摘されたりする例が後を絶たない。(狩野浩平、前川浩之)
〈大津いじめ事件〉2011年10月11日、中学2年の男子生徒(当時13)が自殺した。その後、同級生から暴行を受けていたことが発覚。学校や市教育委員会はいじめを認定したが、自殺との因果関係は不明とした。13年1月、大津市が設置した第三者委員会は「いじめが自殺の直接的要因」と結論づけた。遺族が同級生らに損害賠償を求めた裁判でもいじめと自殺の因果関係が認定された。
大津いじめ事件で息子を亡くした父親(56)は「早い段階で協力してくれる人がたまたまいたから真実が見えた」と振り返る。
「周りのことを常に気にかけ、場の雰囲気が悪ければおどけて場を和ますような優しい息子だった」。そんな息子がなぜ、死ななければいけなかったのか。本当は何があったのか。
最初の学校と市教委の調査結果で認定されたのは、聞き及んでいたいじめのごく一部だった。全容がわかればもっと、自殺との因果関係がはっきりするのではないかと思い、市教委の調査が打ち切られてからも、何があったかを話してくれる同級生を探し続けた。事件から2カ月、当時の暴行の様子を生徒7人から直接聞くことができた。これらの証言は第三者委の報告書にも盛り込まれた。
いじめ防止法が成立し、第三者委が調査するのは当たり前になった。「息子が命をかけて作った法律だと思っている。子どもを守る法であって欲しい」
だが、再発防止に役立つ調査ができていないケースも少なくないとみる。
同じ思いをしている被害者らを助けたいと、2012年からいじめ被害者の支援活動を始めた。弁護士を紹介したり、現地に行ったり、これまで20件以上に関わった。中には、教委が第三者委の委員名すら被害者に公表しないケースも目の当たりにした。こうした場合、教委にとって都合のいい人選をしたのではないかといった疑念が生まれ、「(被害者側は)突き放された気持ちになる」。被害者側も納得できる再発防止のための調査が当たり前になる日を願う。
いじめ自殺、再調査に託す遺族たち
いじめ防止法に基づき、文部科学省のガイドラインでは、自殺や不登校といった「重大事態」があった場合、利害関係がない第三者委員会で調査をすることを求めている。調査が不十分であれば、地方公共団体の長は再調査ができる。
「再調査でようやく娘に何があったか知ることができた」
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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