新型コロナウイルスの「第6波」の影響で、救急車を呼んでも搬送先がすぐには決まらないケースが増えている。救急搬送をする側も、もどかしさを抱えている。患者や家族からの119番通報を受けて対応にあたる消防の管制室に、記者が入って取材した。
9日午後、神戸市消防局の管制室には119番通報がひっきりなしにかかっていた。「息苦しいんですね」「意識はありますか」。コロナ患者の家族の通報に、男性職員が応答。救急車を現場に向かわせた。
戸田太・救急研修係長(50)は「第6波は感染者が非常に多く、搬送困難事案が増えている」と話す。「医療機関への受け入れ照会が4回以上」かつ「現場滞在が30分以上」の「救急搬送困難事案」は、6日までの1週間に同市で163件発生。前年同期(32件)の5倍超だ。
また、「第6波」の当初は若者の搬送が多かったというが、「1月下旬から明らかにフェーズが変わり、容体が悪化した高齢者の搬送が増えている」(戸田さん)という。
8日には、発熱して血中酸素飽和度も下がった高齢者の搬送先の決定に、5時間34分かかった。救急隊が酸素投与をしながら、搬送先を探したが、「満床」「他の患者対応で多忙」などと断られ続け、搬送先が決まるまで医療機関に46回照会した。
救急隊員たちには、現場から戻ると休む間もなく次の出動があり、コロナ陽性者の搬送後には救急車内の消毒作業にも追われているという。
同市消防局の救急車は34台(夜間は33台)あるが、4日夜には31台が出動中か消毒中で、出動可能な救急車が市内全域で残り2台になったこともあったという。戸田さんは「すぐに駆けつけて救急搬送するのが仕事だが、受け入れ病院がなかなかみつからず、非常にもどかしい。状況改善には、新規感染者を減らすしかない」と訴える。(長富由希子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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