「感情揺さぶられた」ハワイ州知事が初の広島訪問 原爆死没者に黙禱

 広島県と米国ハワイ州の友好提携25周年を記念し、ハワイ州の日系3世デービッド・ユタカ・イゲ知事(65)らが広島を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花して黙禱(もくとう)し、平和を祈った。4日に6日間の日程を終える。イゲ知事が朝日新聞の書面での取材に応じ、ハワイ州知事として初めての訪問を語った。

 ハワイと広島の縁は1885年にハワイ政府と明治政府間の「官約移民」に始まり、全国最多の約1万1千人が広島から渡った。州内には現在も四つの広島県人会がある。1997年には県とハワイ州が友好提携を結び、交流を続けてきた。

 今回、広島を訪れたのは、イゲ知事やハワイ州議会議員ら60人超。湯崎英彦知事と会談したり、フラダンスやウクレレ演奏など文化を紹介するイベントに出席したりしたほか、県立図書館とハワイ州公共図書館の姉妹図書館協定も結んだ。10月には、湯崎知事らがハワイ州を訪問し、互いに交流を深める予定だ。

 訪問団は8月31日、原爆死没者慰霊碑を訪れた。花を手向け、目を閉じて手を合わせたイゲ知事は書面取材に「原爆で亡くなった人に敬意を表し、感情を揺さぶられた」と振り返った。

「多くは知らないが…」日系人部隊に所属した父親

 ハワイ移民の足跡をまとめた資料によると、旧日本軍によるハワイの真珠湾攻撃で幕を開けた太平洋戦争開戦時、ハワイ在住の日系人は15万人に及んだとされる。米国では多くの日系人が「敵性外国人」として扱われ、日系社会の「リーダー格」とされた人が強制収容された。米国への忠誠を証明しようと、米軍に志願した日系人も多かった。

 イゲ知事の父親も戦中、欧州戦線で激闘を展開したことで知られる米軍の日系人部隊「第442連隊」に所属した。イゲ知事は「父が戦時中に何をしたのか、多くは知らない。だが、日系人たちは戦後、武器を置き、未来の建設を始めた。かつて敵国同士だった日米両国(関係)を共に再建した」と答えた。

 ハワイ州には広島で被爆した日系人も暮らす。イゲ知事は「原爆で亡くなった人たちのことを考えると深い悲しみを覚える。オバマ元大統領が(平和記念資料館の芳名録への記帳で)述べたように、『共に、平和を広め、核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょう』」と強調した。

 イゲ知事は広島で感じたことをハワイで次の世代に伝えていく意向だ。「広島で学んだ教訓を、将来の世代がより良い世界を築くために役立つように伝えていかなければいけない」(戸田和敬)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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