ロシアの侵攻から逃れたウクライナの人たちの日本への避難が続いています。9日にも日本政府が座席を借り上げたポーランド航空の直行便で入国しましたが、政府はこれらの人は難民条約上の「難民」ではなく、特例的な「避難民」と位置づけています。ただ、識者からは「難民として受け入れられるはず」との声が上がっています。難民法に詳しい明治学院大学の阿部浩己教授に聞きました。
戦争や武力紛争から逃れてきた人は、難民条約上の「難民」ではない、というのは国際社会では半世紀近く前の考え方です。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は1979年に、「武力紛争によって国を離れないといけなくなった人は、通常、難民条約上の難民にはあたらない」という難民認定の基準を公表しました。
しかし、難民条約はもともと第2次世界大戦期に深刻化した難民問題を受けて定められたという経緯があり、研究者らからはこの基準について「戦争で国を離れざるを得なくなった人を助けられないのでは、条約の趣旨や目的に反するのではないか」との批判が出ました。
条約の解釈を広げてきた国際社会
こうした見解をふまえ、カナダやアメリカ、オーストラリア、フランスなどの難民認定機関や裁判所は90年代から「戦争から逃れてきた人であっても条約上の難民にあたる」との判断を次々に出すようになりました。UNHCRも2016年には「戦争、武力紛争であっても条約上の難民に該当する」と明記したガイドラインを出しました。
国際社会では、研究者や難民認定機関、裁判所、UNHCRが議論や実践を重ね、難民条約として解釈の幅を広げてきたのです。
しかし、日本は国際社会の潮流から距離を置いたままです。日本政府の政治的な裁量によって難民条約上の難民の解釈をものすごく狭く解釈してきています。このような考え方から、日本では難民認定の基準が厳しいのです。
日本は国際社会の潮流に乗っていない
今回も「戦争から逃れてきたので難民ではない」と一概に言ってしまうのではなく、難民条約の理念に照らし、個別の事情にきちんと着目して審査すれば、条約上の難民にあてはまる可能性は十分にあります。
「難民鎖国」とも指摘される日本、また日本社会がこの問題にどう向き合っていくべきなのかをさらに考えていきます。
条約では迫害の主体が誰か…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル