ロシアのウクライナ侵攻に抗議する集会が26日、広島、長崎両市で同時に開かれた。両被爆地で平和運動に取り組む若い世代の有志が呼びかけた。
ロシアの核威嚇発言に反発「長崎を最後の被爆地に」
集会は広島市中区の原爆ドーム前と長崎市の爆心地公園であった。「長崎を最後の被爆地に」との願いを込め、長崎に原爆が投下された午前11時2分に合わせる形で、広島の約60人と長崎の約40人が「ノー ウォー」「ノーモア ヒロシマ ノーモア ナガサキ」などと英語、ロシア語で書かれたプラカードを掲げ、黙禱(もくとう)した。
呼びかけ人の一人で、広島市でカフェを営む安彦(あびこ)恵里香さん(43)は、ロシアのプーチン大統領が核兵器保有を背景に威嚇するような発言をしたことに触れ、「核戦争の可能性が示された。今こそ被爆地の抗議の声を世界に届けたい」と訴えた。
2人の娘と参加した広島市西区の保育士、関田恭子さん(41)は「ニュースを見て、いてもたってもいられなくなって駆けつけた。戦争に巻き込まれるのは子どもたちを含む民間人。胸が痛い」。小学3年の長女、有香さん(9)は「戦争はこわい。戦争はやらんでほしい」と話した。
長崎では元高校生平和大使の林田光弘さん(29)がSNSで呼びかけた。
私たちはウクライナの側にいる
チェルノブイリ原発事故による放射線の健康影響の共同研究に携わる長崎大助教の高橋純平さん(54)=長崎市=は青と黄色のウクライナ国旗の色に塗ったマスクをつけて参加した。25日夕、中西部ジトーミル州に住む友人とビデオ通話中に爆撃音が聞こえ、友人は通話を中断して防空壕(ごう)に避難したという。「ロシアにも友人がおり、こうして平和が脅かされているのは非常に悲しい。私たちはウクライナの側にいると伝えたい」と話した。
被爆者の森口貢さん(85)は「まだ核兵器で国の安全を守るという発想をしていることが許せない。日本政府は核兵器禁止条約を批准し、核は平和をつくるものじゃないとアピールしてほしい」と話した。(三宅梨紗子、榎本瑞希)
京都でもロシア、ウクライナ人ら抗議
京都市東山区の円山公園でも26日、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する集会があった。関西在住のウクライナ人やロシア人ら約100人がウクライナの国歌を歌い、「ストップ・ザ・ウォー」と訴えた。
この春、京都大大学院博士課程に入るロシア人のタチアナ・クノロズさん(25)が呼びかけた。ロシア人らの反戦デモが東京で行われていると知り「関西でも」と考えた。「どんな戦争にも賛成できない」「17歳の妹もロシアでプーチン政権への抗議活動をしているが、いつ逮捕されるかわからず心配だ」
神戸市須磨区から参加したウクライナ人のテチアナ・コルチュクさん(28)は両親が首都キエフに住む。実家近くでも爆音が鳴り、サイレンの度に両親はシェルターに隠れるという。「一人でいると心配でずっと泣いてしまうのでここに来た。今のウクライナの状況を多くの人に知ってほしい」と話した。(大貫聡子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル