25歳年下の架空の妹の戸籍を作ったとして、有印私文書偽造・同行使などの罪に問われ公判中の吉野千鶴被告(73)=東京都大田区=が3月中旬、朝日新聞の取材に応じた。「誰かが止めてくれるだろうと思ったができてしまった」「若く見られたいわけではなく、妹が欲しかった」と主張した。
2021年夏。工事現場の警備の仕事を辞めたあとだった。ふと、「妹」の戸籍を作ることを思いついた。
子どもの頃、妹が欲しかった。当時は大阪の実家で祖母と2人暮らし。祖母の面倒を1人でみていて、相談相手を欲していたと思い出した。以前、戸籍のない男が二つの国で二重生活を送る小説を読んだことがあった。
スマートフォンで検索した。家庭裁判所で手続きをすれば、作れるかもしれないと思った。就籍という手続きらしい。
猫の命日から設定した誕生日
「妹」の名は「岩田樹亜(じゅあ)」にした。姓は旧姓、名は木が好きだから。年齢は自分より25歳下にした。あまり高齢だと「今までなぜ戸籍を作らなかったのか」と疑問を持たれる。若すぎれば母親の年齢から不自然と思われる。ちょうど良いと思った45歳に設定した。誕生日は死んだ愛猫の命日にした。
弁護士に会い、手続きを相談した。妹が架空と気付かれないよう、「母親の死をきっかけに調べたところ妹の無戸籍がわかった」という設定にした。弁護士から妹を連れてくるよう言われ、妹になりきることにした。
マスクをする程度で、見た目や話し方は特に変えなかったが、弁護士は気づかなかった。「これでいけるのか」。驚いた。自分と妹、それぞれの立場で数回ずつ、交互に弁護士と会った。
夫は付き添いで来た。「とどまることも考えた方が良い」と言われたこともある。だが、「誰かが気づいて止めてくれるだろう」と、手続きはやめなかった。
弁護士を通じて21年11月、就籍に向け「家事審判申立書」を東京家裁に出した。「吉野千鶴」「岩田樹亜」の二つの立場で、家裁に出向いた。
樹亜の生い立ちについて質問された。「学校には行っておらず、スナックで働き、保険証は友人から借りていた」ことにした。近所の教会で牧師からおやつをもらった実体験を、樹亜の思い出として語った。いつばれるかと、心臓がバクバクしていた。
1カ月後、免許試験場で「全部わかっているんだ」
手続きの終盤、弁護士を解任…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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