教師になって10年目。新学期恒例の保護者面談がやってきた。高校2年のクラスを受け持っていた高橋みな子さんは、いつものように教室で保護者と向かい合った。
ある男子生徒の母親との面談が始まると、母親はこう言った。「息子は本当に不幸です。小学校からずっと、担任がほとんど女。それが、高2になってまで女ですから」。予期せぬ言葉にショックを受けた。
高橋さんにとって、教師はあこがれの仕事だった。小学5年のとき、担任の女性が情熱をもって生徒に向き合う姿勢に影響を受け、「こんな先生になりたい」と思った。
中堅になり、担任の経験も何度かしていた。保護者面談の場では、つとめて冷静に「校長の任命ですので」などと説明し、やり過ごした。ただ、「女だから」と言われてショックを受けたのは、初めてではなかった。
「女だから」 はね返してきた
高橋さんは1935年生まれ。大学進学を希望したとき、父からは「女だから大学に行かなくてもいい」と言われた。姉と妹は洋裁学校を出てすぐに結婚し、兄だけが大学に行った。
高橋さんは高校の修学旅行を…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル