「捕まるまで」24年借り続けるアパート 夫が見つけた小さな手袋

奈良美里

 壁にかかる1999年11月のカレンダー。18日はぐるりと丸で囲まれ、「むしば 母子手帳」の文字。成長を楽しみにしていた母が、2歳の息子の歯科健診に行くことはなかった。

 高羽悟さん(67)は99年11月13日、名古屋市西区の自宅で、妻の奈美子さん(当時32)を殺害された。今も現場となったアパートを借り続けている。

 事件直後は、「部屋を片づけなくては」という思いに駆られた。息子を預けて、廊下に残った血をひとりでこすり取った。12月の冷え込みで、ためたお湯はすぐに水になり、指先がかじかんだ。

 そんな折、奈美子さんの母親から言われた。「家具をもう少し持っていてくれる?」。片づけなくてもいいんだと気持ちが楽になった。さらに、奈美子さんのものだと思っていた玄関の血痕が犯人のものだということもわかり、「捕まるまでは部屋を保存して、実況見分をする」と自分をふるいたたせてきた。

 この部屋で最近、袋に入ったままの小さな手袋を見つけた。事件の1カ月前に家族3人で訪れたディズニーランドで、奈美子さんが2歳だった息子に買ったものだと思う。「寒くなったら着けさせようと思って、あのとき買っていたんだ」。そんな息子も独り立ちし、東京で就職した。

情報提供を呼びかけ

 奈美子さんの命日の13日、高羽さんは西区内にある商業施設で情報提供を呼びかけるちらしが入ったマスクを配った。血痕のDNA型鑑定などから、犯人はB型の女とみられる。情報提供は西署(052・531・0110)へ。(奈良美里)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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