名古屋市立天白養護学校(現・天白特別支援学校)で7年前に起きた教諭による生徒への暴行事件を巡る訴訟の判決で、名古屋地裁は30日、元生徒の男性(24)の請求を一部認め、165万円を賠償するよう市に命じた。西村修裁判長は、この事件の刑事裁判で認定されなかった教諭による日常的な暴行のほか、他の教員や校長の対応の違法性も認めた。
事件は2017年11月に発生。元教諭の男(65)が同校の運動会で、当時高校3年だった原告の元生徒を蹴るなどしたとして暴行罪に問われ、19年に罰金30万円の刑が確定した。元教諭はこの暴行などを理由に停職処分を受け、その後定年退職した。
この日の判決は問題となった運動会での暴行を認めた上で、当時の同僚の証言などを踏まえて、元教諭が原告を含む生徒たちに「日常的に暴行を加えていた」と指摘。その上で市に安全配慮義務違反があったとした。
判決は運動会に居合わせた4人の教員が暴行を制止しなかったことも認定。教員は生徒の安全を確保すべき立場であることなどを考慮すれば、暴行が「4人の視界に入っていないとは考えられない」と述べ、市に違法行為があったと判断した。
さらに、校長は運動会の前から元教諭の日常的暴行を把握し、繰り返し指導・注意を行っていたが十分に浸透していなかったと指摘。校内の対応だけでは改善しない可能性があったのに、校長が市教育委員会に報告したのは報道機関から問い合わせがあった後の18年7月だったとし、「遅きに失したと言わざるを得ない」と述べた。
その上で、校長の報告遅れの違法性を認定。「一教員の単発的な暴行などの違法性にとどまらない問題で、損害の拡大を生じさせた」と非難した。
賠償額の算出について、判決は元生徒に知的障害があった点も考慮。「自らの感情を他人に伝えることが困難である場合も少なくない」とした上で、「これに乗じて一方的に繰り返し暴行及び暴言を受けたことによる精神的苦痛は相当に大きい」と結論づけた。
元生徒の母親は判決後の記者会見で「市の責任を判決が認めてくれたのは良かった。障害のことをもっと理解し、養護学校が、通っている子どもたちや親が安心できる環境になってほしい」と話した。
市教委は「体罰を受けた原告の方に対して改めて心よりおわび申し上げます。判決内容を精査するとともに、体罰が行われることがないよう引き続き、再発防止に取り組んで参ります」とコメントした。(高橋俊成)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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