「断罪して終わり」ではない 奈良のやせた鹿が浮き彫りにした課題は

 奈良公園奈良市)の柵内に収容されている鹿が衰弱しているとの内部告発を受け、奈良県は「奈良の鹿愛護会」の管理について、「収容環境が不適切」と結論づけた報告書を発表した。動物の保全生態学が専門で、奈良の鹿を調査してきた立沢史郎・北海道大特任助教は「愛護会の負担が大きすぎる。県は責任を直視すべきだ」と指摘する。どういうことか、立沢さんに聞いた。

 ――獣医師の内部告発により県と市が調査に動いた。県は「収容環境が不適切」とする報告書をまとめた。どう受け止めているか。

 県が設置した「奈良のシカ保護管理計画検討委員会」の委員を当初から務める一方、愛護会と共同で奈良の鹿の調査を続けてきた。今回の事態は、なるべくしてなったと思うところと、ここまで来てしまったか、との思いがある。

 たつざわ・しろう 専門は保全生態学・環境科学教育。現在は奈良の鹿愛護会との共同研究として、鹿の昼夜の分布数調査を実施している。

 獣医師の仕事は飼育する個体の栄養状態をベストに保つことだが、愛護会の主な役割は天然記念物「奈良のシカ」という野生の集団を健全に維持することだ。両者の視点はもとから異なる部分があり、鹿の終生飼育が続く中で深まった溝があらわになったのではないか。

 動物の飼育環境に配慮したアニマルウェルフェア(動物福祉)への関心が高まるなか、群れで暮らす動物とはいえ、野生の鹿を密集させる現在の飼育環境は改善の余地がある。しかしだからと言って、面積を広げれば済む問題でもない。

人手、施設、予算…すべてがキャパオーバーしている

 強調したいのは、愛護会の負…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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