還暦を迎えられるにあたって
(天皇陛下会見 前半【「天皇の公務の重みと、それを行うことの大切さを感じている」 天皇陛下即位後初の誕生日 会見全文その1】に続き)
–陛下はこれまでの60年の人生を振り返り,特に印象に残っている出来事と率直なお気持ちをお聞かせください。また,この1年で印象に残った出来事や,今年開催される東京オリンピック・パラリンピックに期待されることをあわせてお聞かせください。
即位の年齢については,歴代天皇の中では,より高齢で即位された天皇もおられますが,還暦を迎えるのに当たっては,もう還暦ではなく,まだ還暦という思いでおります。
これまでの60年を振り返ってみますと,幼少時の記憶として,昭和39年の東京オリンピックや昭和45年の大阪万国博覧会があります。私にとって,東京オリンピックは初めての世界との出会いであり,大阪万博は世界との初めての触れ合いの場であったと感じております。
東京オリンピックでは,私は,当時,皇太子,皇太子妃であった上皇上皇后両陛下と御一緒に,マラソン競技と馬術競技,そして閉会式に出席しました。断片的な記憶ではありますが,マラソン競技で,一生懸命に走っていた円谷選手が競技場内で英国のヒートリー選手に追い抜かれ,銅メダルを獲得したこと,そして,閉会式において,各国選手団が国ごとではなく,混ざり合って仲良く行進する姿を目の当たりにすることができたことは,変わらず持ち続けている,世界の平和を切に願う気持ちの元となっているのかもしれないと思っております。
大阪万博では日本のパビリオンはもとより,外国のパビリオンも多数回り,世界にはこんなにも多くの国があり,一つ一つの国が様々な特色を持っているのだということを目の当たりにしました。
青年に達してからの大切な記憶として,まず思い起こすことは,オックスフォード大学への留学です。一人の留学生として,日本にいる時より自由に行動でき,その中で,様々な人との交流を重ね,イギリス社会を内側から見つめるとともに,外から,より客観的に日本を見る視点を養うことができたこと,そして,研究生活を通じ,「水」問題への関心の一つの端緒となった研究論文に取り組むことができたことなど,現在の公務に取り組む姿勢にも大きな影響を与えている数々の貴重な経験をさせていただきました。このような機会を与えてくださった上皇上皇后両陛下に,改めて感謝申し上げたいと思います。
平成になり,皇太子となって平成5年に結婚し,雅子と二人で支え合いながらいろいろなことを経験することができたこと,そして,愛子も生まれたことは本当にうれしいことでした。親として,愛子の成長を見守ってくることができたことも喜びでした。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース