「新証拠」揺れる司法 逮捕から40年、鑑定に限界 大崎事件の再審棄却(産経新聞)

 逮捕から40年。昭和54年に鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった大崎事件で、原口アヤ子さん(92)らの再審開始を認めなかった最高裁決定は、鑑定結果を厳格に判断し、再審の決め手となる「新証拠」にあたらないと判断した。かつて「開かずの扉」と言われた再審請求も近年は相次いで認められてきたが、今回の決定は、証拠の乏しい事件でのハードルの高さを浮き彫りにした。

 刑事訴訟法は、無罪にすべき明らかな証拠を新たに発見した場合、裁判のやり直しを認めている。かつては誤審だと確実に判断できるレベルの証拠を求められたが、昭和50年に最高裁が出した白鳥決定は、新旧証拠を総合的に判断した結果、「判決に合理的な疑問が生じれば足りる」と、緩やかな新基準を示した。近年は科学鑑定などを決め手に、再審開始が認められるケースが相次いでいた。

 原口さんを有罪とした確定判決の柱となるのは、共犯とされた元夫、元義弟、元おい(いずれも有罪確定)の自白▽「死因は窒息死」という解剖医の鑑定▽元義妹の目撃証言。弁護団は第3次再審請求審で(1)法医学鑑定(2)心理学鑑定を新証拠として提出した。

 (1)は、被害者が自転車ごと溝に転落した事故などによる出血性ショックで死亡した可能性が高い、とするもの。(2)は事件当日に共犯者の元義弟が「殺してきた」などというのを聞いたという元義妹の目撃証言は「体験に基づかない情報が含まれている可能性が高い」という内容だ。

 鹿児島地裁は(1)、(2)のいずれも確定判決に影響を与えると判断し、再審開始を決定した。福岡高裁宮崎支部は(2)を新証拠と認めなかったが、(1)を重視。死因が窒息死でなければ、これと矛盾する共犯者の自白や元義妹の証言の信用性には疑義が生じるとし、再審開始を支持した。

 一方、最高裁は、(1)の影響力に疑問を呈した。

 被害者の遺体は解剖の時点で腐敗が進み、「不鮮明」「不明」という所見が多数あった。さらに、(1)の鑑定人は遺体写真12枚のみで鑑定しており、鑑定の証明力には「限界があるといわざるをえない」と指摘。高裁支部は(1)を「決定的な意味を持つ証拠だと過大評価した」とした。高裁支部決定の屋台骨である(1)の証明力が否定された形だ。

 元東京高裁部総括判事の門野博弁護士は「再審請求審の法医学鑑定は、証拠が乏しい中で相応の判断を示している。共犯者の供述には変遷など不自然な点もあり(最高裁が)『相応に強固な信用性がある』としたのは疑問だ」と指摘。「総合的に検討すれば再審開始を支持すべきだった。最高裁は新証拠に要求するハードルを高く設定しているように見える」と話した。

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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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