「日(ひ)にち薬(ぐすり)」。いい言葉ですね。今や全国区の知名度を得たようです。
日にち薬、どう使うの?
テレビから流れてきた言葉が気になった。「日にち薬」。関西の言葉らしい。静岡出身の私は初めて聞くその言葉、京都育ちの友人に聞くと、「日常的に使うよ」と返ってきた。「関西の言葉なんだ」と驚いた様子。
「大阪ことば事典」(牧村史陽編)をめくる。「日数を重ねてじっと養生していれば病気やけがが自然によくなってくる意」とある。
「日にち薬ってどんな薬?」とホームページに記す医師が神戸市にいた。整形外科を開業する井尻慎一郎さん(64)。訪ねると、開口一番、「昨日も患者さん2人が使いはったんですよ」。
神戸出身で、昔から知っていた。手術が多い病院の勤務医だった頃はほとんど耳にしなかった。しかし、20年ほど前に開業して患者と話す機会が増えると、患者から聞くようになった。自分からは使わないが、「日にち薬ですよね」と言われたら、「そうですね」と答える。「不安を感じている患者さんが安心できる、すてきな言葉だと思います」
ただ、すべてを「日にち薬だ」とは言われたくない。「医者としては、せっかく来てくれたのなら、湿布をしたりリハビリをしたり、治療をして楽に治してあげたいですよね」と笑った。
国語辞典に登場!
この言葉、方言辞典にとどまらなかった。2008年に「三省堂国語辞典第6版」で、新たに収録された。「日にち」の項目のなかで、用例として出てくる。「あとは日にちがたてば自然とよくなること」
「長らく全国区の言葉とは言えなかったが、次第にマスメディアにも載るようになってきた」と、飯間浩明編集委員がメールで回答してくれた。21年12月発売の第8版では、独立した項目として、「昇格」した。
言葉が一般化したことを示すひとつの指標として、飯間さんが挙げたのが、18年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」でのワンシーン。妻を亡くした男性に向けた、風吹ジュンさんの語りだ。「弥一さんにとっては、毎日はクリアすべきものとなりました。しんどいね。大変だね。でも、日にち薬だよ。絶対、だんだん楽になります」
体の不調だけでなく、悲しみに対して使うこともあるようだ。
脚本の北川悦吏子さんは岐阜…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル