被害当事者から市民団体メンバー、弁護士、国会議員が駆け付けた。川崎市が成立を目指す差別根絶条例で福田紀彦市長が表明した「刑事罰導入」という決断。市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が開いた記者会見は歓迎の声に染まった。
在日コリアン3世の崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さんは市議会の傍聴席、いつもの最前列で福田市長の表明を聞いた。
「胸が詰まった。刑事罰で実効性が確保されれば日本一の条例になる。私たちも同じ人間と認められる社会が実現する」
わがまち川崎区桜本がヘイトデモの一団に襲われたのは2015年11月。冷たい雨の記憶が消せない。「ゴキブリ、ウジ虫、たたき出せと叫ばれ、誰も助けてくれなかった」。市民ネットワークを立ち上げ、市役所や市議会で実効性のある策を求める日々を重ねてきた。
禁止・罰則規定のないヘイトスピーチ解消法の限界は明らかだった。なのにしばしば表現の自由が持ち出され、傷ついた。ヘイトスピーチは表現の自由の範疇(はんちゅう)ではない。ここ川崎では横浜地裁川崎支部によって桜本でのヘイトデモを禁じる仮処分決定も出ている。
「表現の自由か私たちの人格権か、一方を選択するような議論はとっくに終わっている。私たちは誰かを罰するために罰則を求めたのではない。被害から守られる策、被害を止めるための策を求めてきた。罰せられるのは人を人として認めないヘイトスピーチだけ」
神原元弁護士も市長の表明を開口一番、「ヘイトスピーチ根絶へ歴史的に極めて重要な一歩」と評した。「本気で根絶するには刑事罰の抑止力が必要」なだけでなく「刑事罰であれば最終的な判断は司法によって下される。何がヘイトに当たるかは司法の場で決着がつけられる。行政委員会などと比べて第三者性が確保され、公明正大さが確保される」と持論を述べた。
市が「行政刑罰」と位置付けている点にも着目する。「行政上の義務違反を処罰するもの。市が何らかの基準や段階を設けるなど、表現の自由に配慮した工夫がされるのではないか」と期待した。
解消法の成立に尽力した有田芳生参院議員(立憲民主党)は表情を引き締める。解消法の不足を補う形で自治体の条例づくりが広がっていることに歓迎を示しつつ「解消法が理念法にとどまらざるを得ず、自治体に負担を強いている責任が国にはある。画期的に成果を前に進めてくれている川崎の水準に達する必要があると国会で議論していきたい」と約束した。
崔さんは念押しするように言った。「日本で初めての一歩を踏み出す市を孤立させない。今まで通りオール川崎で歩を進め、全会一致で日本一の条例ができると信じている」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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