畜産県・宮崎で猛威を振るった口蹄疫(こうていえき)の発生から、20日で丸10年。養豚業を営む香川雅彦さん(62)=川南町=は、すべての豚が殺処分された経験をバネに、地域ぐるみで病気を抑え込む仕組みづくりに挑んだ。「ピンチをチャンスにかえる」。努力は実り、一帯は衛生度の高い養豚産地として復興を遂げた。
2010年5月、香川さんは1頭の豚の鼻に水疱(すいほう)を見つけた。「とうとう来たか……」。ウイルス性の家畜伝染病・口蹄疫だった。
ウイルスは農場内に瞬く間に広がった。生後間もない子豚が感染した母豚の乳を飲み、口の中に水疱ができた。多くの豚が次々に倒れていく。「地獄のようだった」
手塩にかけて育てた8200頭は、3日と経たずに殺処分された。廃業も頭をよぎった。それでも、従業員のくらしを支えなければならない。再開に向けて農場の清掃や消毒を続けた。
「ここから日本で一番健康な養豚産地をめざしませんか」。町内で16万頭超の豚の殺処分が終わった6月下旬、農場の管理獣医師から提案された。「豚がいない今なら病原体もいない」という逆転の発想だった。
口蹄疫の終息宣言が出たのは8…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル