亀岡龍太
2022年2月のロシアの侵攻からまもなく2年。侵攻直後にウクライナの首都キーウから故郷の三重県内に避難してきた浅井絵利香さん(37)がこの春、ウクライナ人の夫(39)が残るキーウに幼い娘2人と戻る決意を固めた。
浅井さんは地元の高校をへて金沢大学を卒業。ウクライナから京都大学に留学していた夫と金沢市内で出会って結婚した。大阪府吹田市で約8年間暮らし、2児を授かった。21年春、キーウに家族で移り住んだが、侵攻直後の22年3月に郷里に避難。その後は夫と連絡を取りながら育児に追われる多忙な日々を送る。
「戦争状態は1カ月ぐらいで終わるのではないかと帰郷時は期待したが、長期化してしまった」と言い、戻るタイミングを慎重にはかってきた。実際は今も現地で武力衝突が続き、外務省は渡航中止を含む「退避勧告」を出したままだ。しかし、浅井さんは「現地は危険がゼロではないが、成長する子どもたちとともに、家族で過ごす時間を大切にしたい」。
昨年7~8月、母子でキーウに一時帰国した。夫や義母と再会し、無事を喜び合った。ロシアのミサイルを撃ち落とす防空システムは機能していた。周辺の建物などはあちこちで破壊されていたが、自宅は被害を免れ、一部で復興の動きもみられた。ただ、近くの公園では体が傷ついた人の姿が目立った。
6歳と4歳の娘は現在、幼稚園の年長と年少クラスに通う。秋に新学期となるウクライナでは、長女は昨年9月から小学校に進学するはずだった。しかし、それに合わせて戻ることは見送った。
夫は兵役があって出国できないという。「長引く戦争で、彼にいつ召集がかかるか分からない。娘は夫といると気持ちが安らぐようで、今、少しでも長い時間を一緒にいられるようにしたい」と浅井さん。ただ、ロシアはインフラを攻撃対象として狙うことが多いという。現地は厳しい生活を余儀なくされることも予想され、いつまでいられるかは不透明だ。「現地の状況次第では日本にまた戻る可能性もある」
浅井さんは4日、そんな思いや昨夏のキーウの状況などを地元で報告。「ウクライナは今の困難を乗り越え、日本を含む世界各地からの支援にお返しをできる日がくると信じている。長く見守ってほしい」と訴えた。(亀岡龍太)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル