「昭和のリアル」踊り子追う65歳 ストリップ劇場行脚に2千万円(西日本新聞)

 年に100日は足を運ぶ場所がある。ストリップ劇場だ。早崎弘さん(65)=東京=はひいきの踊り子を追い掛けて、「A級小倉劇場」(北九州市)に月イチペースで遠征してくる。本格的にストリップにはまった2005年以降、国内外の劇場行脚に「2千万円」ものお金をつぎ込んできた。

【写真】A級小倉劇場で、踊り子のポスターを眺める早崎弘さん

 昭和40年代に全盛期を迎え、今や全国で約20カ所となったストリップ劇場。九州最後のとりではJR小倉駅の目と鼻の先にある。

 開演は午後1時。1日4回公演で高齢者や女性には割引もある。「午前0時ぐらいまで通しでいられるし、高齢者に優しい場所です」。踊り子のポスターがびっしり張られた階段を上って客席へ。本舞台から延びる花道と「盆」と呼ばれる回転舞台。踊り子5人が順番に登場し、独自の世界観を美しく表現する。10日ごとに各地の劇場を回る踊り子。早崎さんはこの世界に「いつもいる顔」だ。「きょうの5人も私を知らない人はいないでしょうね」

 盆の上で見つめてくる踊り子との距離は1メートル足らず。肌に浮かぶ汗も息遣いも感じられるが、決して触れてはならない。踊り子は「近く、でも絶望的に遠い」。でもひとたび舞台を終えれば、千円で一緒に「ポラロイド写真」が撮れて、会話もできる。昭和な「エロ」のイメージが強いストリップもアイドル化が進んだ。ポラの売り上げは「人気投票」。移り変わりの激しい世界を生き抜いてほしい“推し”の踊り子には、差し入れを手に列に並ぶ。

「バーチャルに対抗する最後のライブ」

 「ストリップはバーチャルに対抗する最後のライブですよ」。人と人が画面を介して交わり、恋やスポーツも仮想現実の世界で楽しむ時代。特有の熱と匂いを共有できるリアルが、ストリップに引きつけられる理由だ。早崎さんが10年間応援し続けている踊り子、安田志穂さんは「ストリップは、混沌(こんとん)とした人間社会の凝縮」と語る。人には言えない悩みや重い心の傷を抱える人々を見てきた。「劇場は踊り子と客がお互いを支え合う空間。だから、存在してもいい世界だと思う」


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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