「書店は儲からない」を変える仕組みは 岐路に立つ独立系と大手連合

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聞き手・高重治香

 書店の減少で、近所で本を買えない地域も増えています。利益が出にくい現状の書店ビジネスの問題点とその打開策は。出版流通に詳しいフリーライターの永江朗さんに聞きました。

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 本の出版流通は、百年ぶりの大転換期にあります。

 書籍と雑誌が同じ運送便で全国の書店に届く現在の配本の仕組みは、関東大震災後に原型ができました。雑誌は、出版社にとっては販売と広告で二重に利益が出るビジネス。書店も大半は雑誌の販売で成り立ってきました。しかし人口減とデジタル化で雑誌という経済的基盤が崩れ、雑誌にうまく乗っかってきた書籍も苦境に立たされています。

 現在の出版流通の仕組みは、書店が利益を出しにくいものです。新刊は1日平均200点も出るので、多くの書店が、配本を担う出版取次会社に仕入れる本の選定も頼っています。しかし取次は、規模や立地に応じて機械的に選んだ本を送るので、各店の客層に合わない本も多い。その結果、平均で雑誌40%、書籍30%ほどが返品されます。60冊を売るために100冊を動かすという、一般的な産業ではあり得ない無駄が起きているのです。無料で返品できる委託販売制度を利用する書店が多いですが、リスクを負わない分、取り分は価格の2割ほどと少ない。日本には、紙の書籍は定価販売するという再販制度があり、戦略的な値引きもできません。

 その店では売れにくい本が届くだけでなく、人気の本は注文しても入ってこないという問題もあります。村上春樹さんの新刊など売れそうな本は、確実に一定数販売できる都市部の大型書店には何千冊と入る一方、小さな書店には入っても数冊ということが起きます。取次と出版社も、後から大量に返品されるリスクは負いたくないですから。

 雑誌が売れなくなり、こうした非効率な仕組みでは回らなくなりました。利益率の低さは書店員の生活を直撃します。大手書店でも正社員は一握り。正社員でも、生活に不安がある、子どもに自分と同じ教育を受けさせてやれない、と転職する方もいます。

書店自ら本選び

 今までも、書店が売りたい本…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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