突然ですが、「朔北」という言葉、ご存じでしょうか。「さくほく」と読み、「北」や「北方」との意味があるそうです。この2文字を使った商標登録が認められるべきかをめぐり、特許庁と北海道にあるレトルトカレーの製造業者が法廷で対立しました。国語辞典からゲームまで持ち込まれた攻防戦の行方は――。
発端は、札幌市の食品メーカーが2020年2月、「朔北カレー」という名称を商標出願したことだった。
自衛隊にちなんだご当地カレー
メーカーのウェブサイトなどによると、レトルトカレーの商品名という。北海道名寄市にある日本最北の陸上自衛隊駐屯地、名寄駐屯地で振る舞われるカレーを、地元レストラン監修のもと家庭向けに再現したという。
名寄駐屯地のウェブサイトによると、「隊歌」に「朔北に屯(たむろ)する 精強部隊」という一節で「朔北」が登場する。
ほかにも、名寄市よりも北にある稚内市で「朔北美術協会」と団体の名前に使われるなど、少なくとも北海道では使用例が少なくないようだ。
事業者は、自社の製品・サービスの名前やマークを商標登録すれば、独占的に使えるようになる。どんな商品に使うのかも指定する。他の商標と紛らわしいものは登録できず、同じ種類の商品で既に似た商標があれば拒否されてしまう。
特許庁が「拒絶」…まさかの先行者が
特許庁は、食品メーカーによる「朔北カレー」の商標登録を拒絶した。メーカーが不服として申し立てた審判請求にも22年10月、「請求は成り立たない」との審決をした。納得できない食品メーカーはこの審決の取り消しを求めて知財高裁に提訴し、裁判に発展した。
なぜ特許庁は出願をはねたのか。審決によると、大きく3段階の論理だった。
①「朔北」は我が国で一般的に親しまれた語とは言いがたい。一種の造語だ。
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②一種の造語である「朔北」…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル