国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐる司法判断のねじれは、開門を命じた確定判決の効力を無くす昨年の福岡高裁判決を最高裁が認める形で決着した。総事業費が約2500億円かかり、「無駄な公共事業の典型」という批判も根強い事業で湾が閉め切られて約26年。法廷闘争は大きな区切りを迎えたが、国や司法への不信は募り、漁業者らが求める有明海再生の道筋も見えていない。
「憲政史上初めて確定判決に従わなかった国を免罪し、司法本来の役割を放棄したものと言わざるをえない」。開門を求めてきた漁業者側の弁護団は2日夕、声明を発表し、最高裁決定を激しく非難した。決定を受けて定例のオンライン会議の議題を急きょ変更するなど対応に追われた。
弁護団は、確定判決に従わないのは「憲法違反」と繰り返し訴えてきた。
福岡高裁は和解協議を双方に提案していたが、国は開門の余地を残した協議を拒んだ。開門命令を無力化した判決でも、高裁は当事者双方に「問題の全体的・統一的解決のための尽力が強く期待される」と付言した。弁護団声明は「開門は不可欠」としながら、今回の決定への厳しい批判だけで終わらず、「わたしたちは有明海沿岸の人々それぞれの利害関係にも配慮しながら、真摯(しんし)に話し合いに臨む所存である」と、改めて国に話し合いの席につくよう求めた。
国に開門調査を求めてきた佐賀県の山口祥義知事も2日夕、報道陣に「確定判決に従わず、和解協議も応じないやり方で判決を勝ち取ることがかなうとすれば、法治国家って何なんだとすら考えざるを得ない」と憤りをあらわに。「ぜひ有明海再生に向かって一つになれる体制をつくってほしい」と国に求めた。
漁業者の絶望感は強い。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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