「核のごみ」(原発から出る高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選定に向けた文献調査が進む北海道神恵内村の村長選が27日、投開票された。現職で調査を受け入れた高橋昌幸氏(71)=無所属=が、脱原発の市民団体副代表で新顔の瀬尾英幸氏(79)=同=を破り、6選を果たした。同村長選は1986年以来、36年ぶり。投票率は89・24%(86年=97・67%)。当日有権者数は706人。
得票数は高橋氏が559票、瀬尾氏が48票。無効票は23票
当選を決めた高橋氏は、支持者らを前に「私の政策をご理解いただいた」と述べ、最終処分場選定については「まず文献調査の結果を見て、議会や村民の意見をどう集約すればいいか考えたい。住民投票はひとつの方策だ」と語った。
神恵内村は2020年10月に国の文献調査を受け入れ、同11月から、原子力発電環境整備機構(NUMO)による調査が約2年間の日程で行われている。
高橋氏は昨年12月に立候補を表明。「調査を受諾した責任を全うしなければならない」とし、今秋にも終わる文献調査の次の段階の「概要調査」(4年間)については、「(進むかどうかは)村民の意思を十分確認してから決断する」と主張した。5期20年の実績や水産業振興や福祉、教育の充実も訴えた。
瀬尾氏は1月に立候補を表明。当初は「核のごみを争点にしない」としたが、告示前には文献調査は容認したうえで、概要調査反対を主張した。ただ隣接する泊村在住だったこともあり、支持を広げられなかった。瀬尾氏は記者団に「力不足で申し訳ない。核のごみ問題に対する国のあり方や、それを受け入れる高橋氏の村政に異議を申し立てることに意義があり、かろうじてくさびをうちこむことはできた」と語った。
村長選は、20年秋に核のごみの問題が村内で浮上して以来、初めて村民の意思を示す機会だった。高橋氏が大差で勝利し、村民が文献調査には一定の理解を示した形になった。
今後は概要調査前にどんな意思決定をするかが焦点となる。高橋氏は村民の意思を尊重する具体例として住民投票を挙げたが、村に概要調査前の住民投票実施を定めた条例はない。
同時に文献調査が行われている寿都町では、昨年10月に調査推進の片岡春雄氏が反対派を破り6選。町では概要調査前に住民投票が行われる。
一連の調査を巡り、鈴木直道知事は反対の姿勢だ。概要調査前には地元自治体に加え、都道府県知事の同意も得ることになっており、知事の対応も注目される。
「分断」おそれた村民、村長は丁寧に説明を
文献調査が行われている神恵…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル