祖国と信じる日本の景色をこの目で見たい――。ロシア・サハリン在住の聴覚障害者、ヒラヌマ・ニコライさん(75)の長年の夢が18日、実現した。成田空港に到着したヒラヌマさんは、待ちわびた支援者らと抱き合った。
ヒラヌマさんは妻のエマさん(64)らとともに午後3時ごろ、到着ロビーに姿を見せた。感慨深そうに周囲を見渡し、支援者らと抱擁を交わした後、「機内の窓から日本が見えたときは号泣した」と説明した。
終戦前に日本領だったサハリンの北緯50度以南では、一時は約38万人の日本人が暮らした。戦後に何らかの事情で留め置かれた日本人に対しては、民間団体の支援で90年ごろから一時帰国や永住帰国が行われてきたが、ヒラヌマさんのもとにはそうした情報が届かなかった。初めて日本人と出会ったのは、昨年、聴覚障害者同士の交流だった。
ヒラヌマさんらは29日までの日本滞在中、広島の平和記念資料館や京都・奈良を訪れ、サハリン出身の聴覚障害者らと交流する。サハリン在留の日本人や永住帰国者を支えるNPO法人・日本サハリン協会の斎藤弘美さんは「ろう者同士だからこそ、つながりあえた。今回の交流を通じ、ろう者から見たサハリンの歴史が明らかになるでしょう」と話す。(熊井洋美)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル