進学で明日にはふるさとを発つ。高校を卒業したばかりの大内海斗さん(18)はその日、母校にある野球部の室内練習場で、祖父の栄さん(69)とキャッチボールをした。山口県防府市。空は快晴だった。
ジャージー姿のじいちゃんは「2、3球しか投げられんと思うよ」と言いながら、手渡したグラブに拳を2度たたきつけた。一緒にキャッチボールするのは、かれこれ6年ぶりだ。
初球は胸の前に真っすぐ伸びてきた。やっぱりすごい。「久しぶりやね」「ほんと」。白球とともに、たわいのない言葉が行き交った。
2人で初めてキャッチボールをしたのは幼稚園に行く前だったらしい。小学1年で野球を始めると、40代まで社会人チームでプレーしていたじいちゃんは試合のたびに応援に来てくれた。勝っても、まるで自分が監督のようにダメ出しをする。でも暗くなるまで球を受けてくれたあとは、いつも焼き肉店で一緒に腹いっぱい食べた。じいちゃんを連れていきたかったのに、高校最後の夏はコロナで甲子園への夢を絶たれた。かわりに開かれた県の独自大会で優勝すると、真っ先にメダルを首にかけてあげた。
2、3球だけのはずだったキャッチボールは休憩なしで続いた。30分ほどたってから「そろそろやめようか」とじいちゃんは言うと、そのままベンチで横になった。グラブを外した左手を額に当てて、深呼吸を繰り返した。
昨年1月、じいちゃんに肺が…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル