27歳だった漫画家のことりさんは、12歳年上の男性と結婚した。
聞き上手な夫との暮らしは順調だったが、一つだけかみ合わない点が。
子どもを授かりたいタイミングだ。
まもなく40歳を迎えようという夫は、子どもを早く欲しがった。
ことりさんは、今の生活をもう少し楽しみたい、と思っていた。
かつて母に言われた言葉も、心に残っていた。
「産んだら死ぬまで一生母親なんだからね。可愛いだけじゃない、責任で育てるんだよ」
自分の幼いころを振り返ると、親にはたくさん心配をかけた。
親の立場になったら一生、心配事だらけの生活になるんじゃないかと思っていた。
◇
結婚からしばらくして妊娠。
「うれしい」というよりは、「どうしよう、こわい」という気持ちの方が大きかった。
夫は喜んでいたが、産声を聞くことはかなわなかった。
妊娠がわかってから、わずか数週間後の流産だった。
どこかホッとしている自分と、心にぽっかり穴が開いた自分。
体の一部を失ったようで、何もやる気が起こらず、思い出しては泣く日々だった。
流産がきっかけとなって、自らの意思で「子どもがほしい」と思うように。
結婚から2年半ほど経ったころ、長男が生まれた。
不満が爆発した日
息子が2歳になる前、夫に対する不満が爆発した。
積もり積もった思いを一方的にぶつけるように、こんな言葉でののしった。
◇
ねぇ、昔「なんで子ども欲しいの?」って聞いた時、なんて答えたか覚えてる?
「人間を育てるの、おもしろそう」って言ったんだよ。
でも面倒見てんの私じゃん!
息子に興味ある? スマホばっかり見て!
私はやりたいことも、ひとり…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment