昨年3月に名古屋出入国在留管理局でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が収容中に死亡した問題で、遺族が国に計約1億5600万円の損害賠償を求めた訴訟の弁論が8日、名古屋地裁で始まる。国は請求の棄却を求めて争う方針。遺族は当日法廷で「死の真相を明らかにして欲しい」と訴える予定だ。
遺族が問題視するのは、昨年1月中旬以降、食欲不振など次第に体調が悪化したウィシュマさんに対する名古屋入管の対応だ。具体的には、仮放免を認めずに収容を続けたうえ、適切な医療措置を取らなかったと指摘。訴訟では、これらの入管の対応とウィシュマさんの死亡との間に因果関係が認められるかどうかが焦点となる。
訴訟のポイントは?
特にポイントになりそうなのは亡くなる19日前の2月15日に行われた尿検査の結果を受けての対応の適否だ。訴状によると、脂肪が分解された時に出る物質「ケトン体」やたんぱく質などは「3+」と基準値を超え、飢餓状態で、腎機能障害などの恐れもあることを示していた。
ウィシュマさんは検査後、入管に「外部の病院に行きたい」などとして仮放免を申請したり、点滴を打って欲しいなどと訴えたりした。だが入管は申請を認めず、3月4日に外部の病院を受診させたものの、受診先は「精神科」だった。遺族側は、検査結果を踏まえて入管が仮放免を認めるか、点滴など適切な医療措置を講じていれば亡くならずに済んだと主張する。
検査結果について、内科医で医療ガバナンス研究所(東京)の上昌広理事長は「『3+』は高度な飢餓と脱水症状がある時に出る数値。即座に入院させて点滴を受けさせないと死の危険があることは明白だ。精神科を受診させていること自体がおかしい」と入管の対応を疑問視する。
出入国在留管理庁が昨年8月…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル