新型コロナウイルスの集団感染に見舞われたクルーズ客船コスタ・アトランチカが31日、長崎港を出港した。149人もの感染者発生は地域に不安をもたらしたが、陽性だった乗員は一部の入院者を除き回復。船内の状況を気遣ってきた住民や関係者らは、安堵(あんど)しながら、港を望む橋や岸壁から出発を見送った。
船は正午前、三菱重工長崎造船所香焼工場を離れた。乗員たちは通路に立ち、“THANK YOU VERY MUCH(本当にありがとう)”と記した横断幕を掲げた。岸壁では1カ月あまり診療に携わった医療スタッフらが“BUON VIAGGIO(良い旅を)”と書かれた紙を掲げて手を振った。
香焼工場を望む女神大橋でも、20人ほどの市民が出航を見送った。
2時間ほど前から三脚とカメラを手に待っていたのは、国立病院機構長崎医療センター(大村市)副院長の八橋弘さん(61)だ。
拡大する
センターからは医師や看護師らのべ約30人が岸壁で乗員の診療に携わった。手術を延期するなどして重症者の受け入れ準備も進めた。
「大変だったが、一人の死者も出さず、この日を迎えられてよかった。出航は一つの区切り。自分の目で見届けたかった」
2月に集団感染が起きたダイヤモンド・プリンセス(DP)の乗客の診療にも携わった。「自宅に帰れるだろうか」「周りの目が怖い」と訴えていた乗客の様子が印象に残ったという。船内の個室に1カ月超の隔離された乗員を「精神的に負担が大きかったと思う」とねぎらった。
長崎市で福祉関係の仕事に携わる女性(53)は、船に手を振った。「乗員が市内に出ていたと聞いて怖かったけれど、感染が広がらなくてよかった。乗員の人が、日本にいやな思いを持たなければいいけど」。2年前に同じ運航会社のクルーズ船に乗船。「安心して旅行ができる日は来るのかな」と話した。
香焼工場対岸の同市土井首町で…
980円で月300本まで2種類の会員記事を読めるシンプルコースのお申し込みはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment