「殺さないで」と訴える妻の姿が浮かんだ 無期判決を聞いた夫の決意

 大阪市淀川区で昨年4月、弁当店で働くベトナム国籍のボ・ティ・レ・クインさん(当時31)を殺害したとして、強盗殺人や死体遺棄などの罪に問われた元運送会社員、山口利家被告(60)の裁判員裁判の判決が3日、大阪地裁であった。中川綾子裁判長は「金欲しさの身勝手で冷酷な犯行だ」と述べ、求刑通り無期懲役を言い渡した。

 判決によると、山口被告は昨年4月3日、現金を強奪しようと考え、1階の弁当店に出勤してきたクインさんを2階の自室に誘い込み、背後から腕で首を絞めて殺害。クインさんの財布から約2万6千円を奪った。さらに、遺体を布団圧縮袋で包み、壁とテレビ台の間に押し込み、その上に冷風扇を載せるなどして隠した。

 弁護側は、金を借りようとしただけで、強盗の目的や殺意はなかったとして、傷害致死と窃盗の罪にとどまると主張していた。

 判決は、山口被告が「弁当店の経営者に言われているから、貴重品を持って2階に上がってくれ」とうそをついてクインさんを自室に誘い込み、約2分間で犯行に及んだとし、当初から強盗目的があったと認定。軟骨が変形するほど強い力で2~3分間、首を絞め続けたことなどから殺意も認められるとし、強盗殺人罪が成立すると判断した。

 中川裁判長は量刑の理由について「金を要求し、大声を上げた被害者を殺害して現金を奪った。突然被害にあった被害者の恐怖は大きく、酌量すべき事情は見当たらない」と説明した。(松浦祥子)

被害者参加した夫「妻の夢、代わりにかなえる」

 被害者参加制度を使い、公判を見守ったクインさんの夫のファン・タイ・ユィさん(36)は判決後の記者会見で、求刑通りの無期懲役判決について「妻に報告できる。安らかに天国に行ってほしい」と話した。

 日本文化が好きだったクインさんは、ベトナム人に日本語を教える教室を開く夢をかなえるため、日本語の勉強を続けていた。判決は、犯行によって「理不尽に命を奪われ、夢を打ち砕かれた」と言及した。

 ユィさんは「被告に『殺さないで』と訴える妻の姿が浮かんだ。今でもとても心が痛む」と語った。これからも日本に残るつもりだといい「妻の夢を代わりにかなえるため、日本語を勉強し、日本で仕事を頑張りたい」と力を込めた。(松浦祥子)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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