自身の腕をコンパスのように伸ばし、「遠心力」をいかして円を重ねる。兵庫県の西脇市岡之山美術館で個展を開催中の画家・國久真有(くにひさまゆ)が描き続ける理由は「気持ちいいし、楽しいから」。でも、以前は「なんで皆が絵を描くのかわからなかった」という。
高校でインテリアデザインを専攻した後、ファッションデザインを学ぼうとロンドンに留学。現地でギャラリーや美術館を見て回るうち、アートに関心が移った。帰国して入学した神戸芸術工科大学では、立体作品やインスタレーションを作るつもりだった。
大学では絵画の課題もあったが「わからないから、描きたいものがなかった」。とりあえず床にベニヤ板を置いて絵の具をぶちまけ、お好み焼きを作る要領で混ぜてみると、かつてない興奮を覚えた。「もしかして皆、この快楽があるから描いてるのか」。しばらく食事もせず、発熱を冷却シートで抑えながら、ひたすらその衝動を追った。
それから「何を描くか」の試…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル