豪雨災害などで水没した自動車が、その事実を伏せられたまま中古車として流通するケースがある。冠水の程度によっては販売できる場合もあるが、業界の自主ルールには、明記すべき事故歴に「水没」は含まれていない。知らずに購入を決めてしまった男性は「明示を義務化するべきだ」と訴える。
名古屋市の男性は昨年2月、3歳の息子ら家族と出かけようと、大手中古車情報サイトで1台の黒いミニバンを見つけた。出品元は岐阜県の中古車販売店。メールで状態を問い合わせたところ「内装外装共にコンディション大変良好な車両」と返信があった。
計271万円を支払い、約2カ月後の納車日を待った。だが販売店は「新型コロナウイルスの影響で人手不足」「エラーランプが点灯した」とたびたび納車延期を求めてきた。不審に思い車の所有履歴を調べたところ、元の持ち主の女性と連絡がつき、昨年の九州豪雨で水没していたことが分かった。
男性は弁護士に相談し、支払い済みの271万円の返金を求める裁判を起こした。勝訴はしたが、「家族と一緒に納車を楽しみにしていたが、裏切られた。水没車を購入してしまって悩んでいる人もいる。業界は改善してほしい」と話す。
大手ディーラーや全国の中古車販売業者約1万2千社などが入会する一般社団法人「自動車公正取引協議会(公取協)」によると、2019年度は水没車に関して16件の相談が寄せられた。「中古車を購入したが、納車直後にエンジンが止まった。正規ディーラーに『水没車』と言われたのでキャンセルしたい」といった内容だという。
公取協の自主ルールでは、店頭販売する中古車については整備歴や修理歴の表示を求め、修理歴をないように装う不当表示などを禁じている。
一方、水没の有無については個別の表示項目は設けていない。担当者は「自主ルールは景品表示法に基づくもので、不当表示は禁じられている。水没車の場合は明示することが大前提」と説明する。ただ、4年前に6件だった相談件数が増加傾向にあることも踏まえ、水没の項目の強化や新設を検討中という。
修理歴などの情報は、元の持ち…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル