沖縄の本土復帰から50年。全国のメディアには沖縄を扱った記事や番組があふれている。だが、沖縄の人々の暮らしや思いは伝わっているだろうか。うわべだけでない伝え方とは。
「戦争前夜」の今、伝えるべきこと ジャーナリスト・三上智恵さん
「復帰50年」に関する本土の新聞記事や放送を昨年から多く目にしてきました。でも私には浮足だったもののように思え、もう食傷気味です。
半世紀を振り返り、経済が発展したとか、沖縄出身の芸能人が全国で活躍したとか、無難なネタで逃げている。一方で戦争をめぐる秘話を掘り起こす報道は、相変わらず続いています。それはもちろん大事ですが、もっと伝えないといけないのは「今」です。沖縄に暮らして27年になりますが、今ほど「戦争前夜」を感じることはありません。
奄美大島(鹿児島県)から宮古島、石垣島、与那国島まで南西諸島の自衛隊基地が増強され、要塞(ようさい)化がどんどん進んでいます。これは島を守るためではなく、中国軍の海洋進出をミサイルなどで威嚇、阻止するという米国の世界戦略の一環です。ウクライナ危機は人ごとではありません。沖縄も西側諸国の最前線に位置づけられているのです。
ところが、本土の報道は「ウクライナの次は中国による台湾侵攻だ。防衛力を強化しなくては」とあおり、政治家は米国との「核共有」まで口走っています。国民は不安に駆られ、強いリーダーや軍事力にしがみつくばかりです。
沖縄には自衛隊の基地強化に反対する声も強い。地元紙は日米共同作戦について「沖縄また戦場に」と大きく伝えました。しかし全国から沖縄に対しては「国防に協力しない非国民」というバッシングがSNSなどで浴びせられる。本土のテレビは視聴率がとれるからと、基地に反対する人たちを一方的に攻撃する番組さえ流しました。
立場の違う3人の論者が、昨今の沖縄をめぐる報道のあり方を論じます。記事後半では、慶応大でマスコミュニケーションを研究する津田正太郎さんが、基地問題に対する世論と報道を分析します。翁長雄志前知事の選対事務局長を務めるなど、沖縄県政界に長く関わる又吉民人さんは、18歳の時から抱く「ある思い」について語ります。
沖縄のメディアにも反省すべ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル