交際女性から妊娠の事実を告げられた男は、その日のうちにネット通販で国内未承認の中絶薬を購入した。「産みたい」という相手をだまし、薬を飲ませ、中絶させようとした危険な行為。法廷で「身勝手極まりない」と指摘された男の犯行動機とは――。
5月18日、福岡地裁で開かれた初公判。被告(21)は黒いスーツに黒のネクタイ姿で法廷に現れた。前髪は、目にかかるくらいの長さ。少しうつむいて被告側の席についた。
起訴状によると、男は2020年9月24日夜、当時18歳だった交際相手の女性に国内未承認の中絶薬「ミフェプリストン」2錠を飲ませ、中絶させようとしたとされる。女性はその後流産したが、薬の服用との因果関係が不明だったため、不同意堕胎の未遂罪に問われた。
検察の冒頭陳述や証拠資料から明らかになった事件のあらましは、こうだ。
被告は昨年3月ごろ、女性と交際を始めた。一度別れたが、同年7月ごろから再びつきあうようになった。
検察は、男は交際中にほぼ避妊具を使うことがなく、妊娠したら「子どもをおろせばよい」と考えていた、と指摘した。
弁護人「交際中、性交することはありましたか」
被告「ありました」
弁護人「避妊具はつけていましたか」
被告「つけていませんでした」
弁護人「なぜ避妊していなかったのですか」
被告「妊娠しにくい体質、と聞いていたので」
弁護人「女性から、妊娠したらどうしたいか聞いていましたか」
被告「聞いたことないです」
9月、女性は妊娠に気づいた。被告に伝えたのは9月19日。妊娠4週目。「産みたい」と打ち明けた。
被告は中絶を説得したが、女性の意思は固かった。
このときの被告の態度を、検察はこう指摘した。「被告は女性と結婚する意思がなかった。(中絶の)説得も早々に諦めた」
被告はその日のうちに、インターネットのサイトで見つけた中絶薬のセットを注文した。外国製の薬で、黄体ホルモンを抑制する「ミフェプリストン」と、子宮を収縮させる「ミソプロストール」。2種類を合わせて服用するタイプだった。
被告が飲んだ別の薬
翌20日。「おろすなら早い…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment