新型コロナウイルスの感染拡大への対応として、リモートワーク(在宅勤務を含む)を採り入れる企業が増えている。
しかし、ツイッター上では、「派遣社員は在宅勤務の対象外だ」「結局リモートワークなんて上級国民の正社員様限定特権じゃん」「派遣社員は満員電車乗ってコロナになっても良いの?」などといった声があがっている。
はたして、派遣社員はリモートワークができないのだろうか。労働問題にくわしい佐々木亮弁護士に聞いた。
●リモートワーク可能な職種・業務が対象となる
――派遣社員はリモートワークができないのでしょうか?
現在の労働法上、リモートワークをすることは法的な権利ではありません。ただ、あまり例はありませんが、労働契約書などで『リモートワーク』という働き方を選択できるとされていれば、派遣労働者(派遣社員)でも可能となります。
リモートワークに関しては、そもそも前提として、リモートワークが可能な職種や業務でないと対象になりません。たとえば、受付業務の派遣労働者がリモートワークをおこなうことは不可能です。これは正社員であっても同様です。
今、新型コロナ対策として、リモートワークが脚光を浴びていますが、それらが可能な職種や業務だけで、社会が回っているわけではないことを理解する必要があります。
――リモートワークが可能な職種・業務であった場合はどうでしょうか?
派遣労働者は、派遣元(派遣会社)と労働契約を結んでいますが、労務の提供先は、派遣先で、指揮命令も派遣先から受けます。
リモートワークに関する定めがない場合、この指揮命令権を持つ派遣先が、『リモートワークでOK』となれば、派遣労働者はリモートワークをすることが可能です。
このご時世において、派遣元としては、指揮命令のあり方として、リモートワークを拒絶する理由はないでしょう。
ただし、この際にも、派遣先は、派遣元に、通常の通りの料金を支払わなければなりません。この点、リモートワークとなっても供給される労務の質や量が変わらないのであれば問題はありませんが、もし、これが下がったり、減じられたりするような場合は、コストとの関係で、派遣先が派遣労働者に対してもリモートワークを許可するかどうかの分岐点になるのではないでしょうか。
●非常時には立場の弱さが目立ってしまう
――新型コロナの感染拡大という状況においてはどうでしょうか?
リモートワークに関する定めがない場合、リモートワークを求めて拒否されたら、それ以上の要求は難しいのが現状です。
たしかに、新型コロナへの感染のおそれや、休校による子どもの面倒など、リモートワークが必要な状況が生じうるでしょう。
その場合は、リモートワークを断られても、派遣元企業や派遣先企業に対して、自分で説得することはできます。しかし、実際には、個人の力では難しいのが現実です。
――こうした課題はどう解決すればよいのでしょうか?
本来、労働組合が交渉して、希望する働き方を実現するよう動くのが望ましいところです。
派遣労働者など、非正規労働者でも労働組合を作ることは自由です。また、1人でも入れる労働組合もあります。労働組合であれば、団体交渉権をもって、企業と団体交渉ができます。
また、労働契約書や就業条件明示書で、『リモートワークができる』とあるような場合は、権利として要求することができますが、まだそうした条件が記載されたものは、あまり実例を見ません。
派遣労働者は、派遣先との関係では立場が弱いことが多いため、現在のような非常時には、その立場の弱さが目立つことになってしまいます。
【取材協力弁護士】
佐々木 亮(ささき・りょう)弁護士
東京都立大学法学部法律学科卒。司法修習第56期。2003年弁護士登録。東京弁護士会所属。東京弁護士会労働法制特別委員会に所属するなど、労働問題に強い。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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