岩手県大船渡市の越喜来(おきらい)湾・浪板海岸で、東日本大震災の津波で被害を受けた「アマモ場」が、最大で3割ほど面積を広げながら回復していたことが、北里大学の調査で分かった。
10月上旬の浪板海岸。海水浴場にもなっている静かな砂浜から水中に入ると、目の前に草原のような光景が広がった。海草の「アマモ」が群生するアマモ場だ。長く伸びる葉の近くを、アジやクダヤガラの群れが泳いでいた。
アマモ場は、浅い海に海草や海藻が群生する「藻場」の一種。魚の稚魚の隠れ場所や、餌場となることから「海のゆりかご」と呼ばれている。
長年現地の調査を続けている北里大海洋生命科学部の朝日田(あさひだ)卓(たかし)教授(59)によると、浪板海岸のアマモ場は、2011年の震災前には2500平方メートルほどの面積だったが、震災の津波でほとんどが流される被害を受け、アマモ場をすみかとする稚魚も減少した。しかし、わずかに残された地下茎などから再生が始まり、12年の調査では680平方メートル。13年には1200平方メートル、15年には3400平方メートルと、震災前よりも面積が増えた。16年には台風やウニによる食害で1500平方メートルに減少したが、その後は再び回復しつつある。
震災による地盤沈下で、アマモの生育に適した浅い海域が広がったことや、地元のダイバーや漁師が、大発生したウニを駆除するなどの保護活動を続けてきたことも影響しているとみられる。
朝日田教授は「大津波や地震は繰り返し起こってきましたが、生き物や自然はそれを乗り越え、続いてきた。たくましさを感じます」と話す。
朝日田教授の調査結果は、東北大学、東京大学大気海洋研究所、海洋研究開発機構などで構成される「東北マリンサイエンス拠点形成事業(海洋生態系の調査研究)」が、今年発行する成果報告書に収録される。(諫山卓弥)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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