23日午後1時13分ごろ、北海道斜里町の知床半島西部沖を航行中の観光船「KAZUⅠ(カズワン)」から「船が浸水している」と、救助を要請する118番通報があった。第1管区海上保安本部(北海道小樽市)によると、乗員・乗客は子ども2人を含む計26人。海上保安庁の巡視船艇6隻や航空機4機などが現場に向かい、同日午後4時半から捜索を始めたが、午後8時現在、船体は確認できず、乗員・乗客は見つかっていないという。
船は斜里町の「知床遊覧船」が運航する小型観光船で定員は65人。斜里町ウトロ地区を出航し、世界遺産・知床半島の断崖の滝やヒグマ、オジロワシなどの野生動物を観察する計3時間のツアーの最中だった。同本部によると、118番通報時は知床半島西部の「カシュニの滝」の沖合を航行していたという。海上保安庁によると、船から「船体が30度傾いた」という情報が同社に入っているという。
同本部は23日午後7時40分、航空自衛隊に災害派遣を要請。この事態を受け、国土交通省は同日夜に対策本部会議を開くことを決めた。熊本市を訪問中だった岸田文雄首相は23日夜、当初の日程を切り上げ、自衛隊機で東京へ戻ることを決めた。記者団から事故の状況を問われた首相は「今、確認中だ」と述べた。
札幌管区気象台によると、斜里町ウトロ地区の気温は23日午後1時時点で5・8度。気象台の予測では、同時点の周辺の海水温は2~3度とみられるという。北海道開発局によると、波の高さは1・9メートルだったが、午後1時半時点で約3メートルに上昇した。気象台は当時、強風・波浪注意報を出していた。
カズワンは昨年6月11日にも航行中に座礁し、自力で港に戻るトラブルを起こしている。事故当時、乗客乗組員23人が乗船していたが、けがはなかったという。
知床半島近海では2005年6月、別の会社の観光船が岩に乗り上げ、20人以上が重軽傷を負う事故があった。
知床は05年に世界自然遺産に登録された。地元の観光業者によると、観光シーズンは、暖かくなり始めるゴールデンウィーク前後から10月末ごろまでが中心だという。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル