「深刻ゆえに温かい」 さえない独身中年の漫画、被災地でヒット

 独身中年の地方公務員のさえない日常を淡々と描いた漫画「みやこまちクロニクル」(リイド社)が、東日本大震災の被災地で話題になっている。作者は岩手県宮古市の元職員。実話に基づいているといい、被災、介護といった重い場面でも、ユーモラスな一瞬を切り取る作風が共感を呼んでいるようだ。

 作者で同市出身のペンネームちほちほさん(51)は、子どもの頃から漫画家に憧れていた。岩手大卒業後、宮古市職員になり、仕事のかたわら、同人誌やWEBなどに描き続けた。うつ病で2017年に退職。20年、この作品でリイド社のトーチ漫画賞準大賞を受賞し、09年から22年までの作品を「震災―日常編」「コロナ禍―介護編」の2冊にまとめた。

 徹底的に身の回りを描く。SFや不条理ものなど試行錯誤の末に行き着いたスタイルだ。スランプの時に自作を分析し、「結局、描いているのは自分だ」と気づき、開き直った。職場、病院、買い物、ドライブのとき、携帯で写真を撮りまくり、細かくメモを取り、写実にこだわった。

 とはいえ、日常は変化に乏しい。行き詰まっていた時、震災が起きた。勤務中の激しい揺れに、「何か起きる」と直感した。真っ黒な津波が堤防を乗り越え、市役所に押し寄せてきた。連絡のつかない自宅の両親や、同県大槌町の姉一家の安否を心配した。その後は震災関連の業務に忙殺された。

 「ネタができた」。一瞬、そう思った。

 でもどう描けばいいのか。体験者だから描くというのは、傲慢(ごうまん)じゃないか。ずるくないか。自問し、悩んだ。

 同級生や同業の先輩に促され…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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