「温暖化したおかげで北海道の米はうまくなった」
衆院選のさなかの昨年10月、北海道小樽市。自民党副総裁の麻生太郎氏が街頭で応援演説をしていた。麻生氏は北海道産米が「やっかいどう米」と呼ばれていたことに触れると、こう続けた。
「お米の花が実に変わる、あのころの温度が2度上がった。それだけで売れるようになった」
麻生氏の発言が伝わると、野党や道内の農業団体から「温暖化を肯定するような発言は耳を疑う」「品種改良や農家の努力を無視している」と批判の声があがった。
昨年公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書では、地球温暖化はさらに進み、豪雨、干ばつ、熱帯低気圧に影響していることが報告された。北海道でも21年7月の平均気温は平年より2・8度高く、記録のある1946年以降最も暑い夏となった。
食料自給率200%を誇り、全国の農地の2割以上が集まる日本の食料基地は気候変動によって作物に異変が起きている。
北海道南西部、日本海側の蘭越(らんこし)町。品質の高いコメは「蘭越米」として道産米の中でも人気が高い。
コメ農家「坂野農場」の坂野幸夫さん(55)は農家の3代目。20ヘクタールほどの田で年間100トン近いコメを生産している。麻生氏の発言について、「確かに近年は温暖化によって冷害は減ったが、複雑な気持ち。米の味はどれだけ手をかけたかで決まると思ってきたから」と不満げだ。
父から経営を引き継いだばかりの93年、冷害に見舞われほとんど収穫できなかった。それまで道外の米を食べたことはなかったが、初めて本州の親戚から米を送ってもらった。「うまかった」
その後も数年に一度、冷害に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル