犯罪被害者や遺族を支援しようと、福岡県警は避難場所の確保にかかる費用の補助などに加え、25年前から臨床心理士によるカウンセリングを続けている。未解決事件など支援が20年以上に及ぶものもあり、精神的支援の必要性は増している。
県警によると、被害者の相談にのる臨床心理士を、1996年に全国で埼玉県警、警視庁に次いで配置。希望する人へのカウンセリングを始めた。オウム真理教による地下鉄サリン事件(95年)などで、被害者の精神的被害の深刻さが広く認知されたことが背景にあるという。
その後も09年に被害の診察費の補助、15年に一時的な避難先の準備費の補助、16年には自宅に残る血痕などの清掃費の補助や臨床心理士の増員など、支援を充実させてきた。
刑法犯の認知件数は年々減少しており、県警が支援した件数も16年の1320件から昨年は836件に減った。一方、面接によるカウンセリングの件数は19年が118件、昨年が133件、今年は10月末時点で183件と増えている。
県警で支援を続ける臨床心理士の女性職員は「事件は減ってもニーズは変わらない。逆に支援の必要性が認知されてきていると感じる」と話す。
遺族には「自分がしっかりしなければ」と葬儀などの手続きに奔走し、疲弊する人もいるという。周囲に「大丈夫」と気丈に振る舞う遺族に、女性職員は「きついですよね。あなたが無理をしすぎないでくださいね」と声をかける。「寄り添って、心の重みを少しでも一緒に背負わせてもらいたい」
県警の機関だからこそ、遺族の同意を得て「今はしんどいです」と聴取を担当する捜査部署に伝えることもある。
被害を直接訴えられない未就学児でも、一人で行動できなくなったりおねしょが続いたりといった症状が現れる。県警本部の面会室には、一緒に遊びながらカウンセリングできるよう、おもちゃが置かれている。
現在も県警捜査1課では18件の未解決事件の捜査が続く。心の支援も遺族が望めば継続され、専用の電話や、予約があれば面接もできる。「年数が経って、もう前を向かないといけないのではと悩む遺族もいる。心の痛みはずっと消えない」と職員は言う。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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