鳥取県境港市にある「水木しげるロード」が今年、誕生から30周年を迎えた。かつては「犬や猫しか通らない」と揶揄(やゆ)された港町のさびれた商店街には今、妖怪の魅力に引き寄せられて年間100万人以上が足を運ぶ。だが、整備前には地元から反対の声も上がっていた。
境港市役所の都市計画課係長だった黒目友則さん(74)は32年前のある日、市長室に呼び出された。
「老朽化したアーケードの改修と、それに合わせてにぎわいのある商店街になるよう考えてくれ」。市長から、疲弊した商店街の活性化を指示された。
JR境港駅から東へ延びる商店街はかつて、列車で通勤通学する人や、近くの魚市場で働く人でにぎわった。だが、マイカーが普及するにつれて列車を使う人は減った。昭和50年代には魚市場が別の場所に移転し、市内にデパートがオープンするなどして、人の流れが変わった。
さびれた商店街は、犬や猫しか通らない「犬猫通り」と陰口をたたかれた。
黒目さんはにぎわいを取り戻す一案として、歩道に彫像を置くことを考えた。そうすれば、多くの人が見に訪れてくれるのではないか。
地元のコンサルタントと話し合うなかで出てきたのは、パイプをくわえた船長や人魚など、海辺の街にちなんだものだった。だが、そんなものを本当に見に来てくれるのか。
そんなとき、1枚の妖怪の絵が目にとまった。
境港で幼少期を過ごした漫画…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル