政府の教育未来創造会議(議長=岸田文雄首相)が5月、理系分野を専攻する大学生の割合について、2032年ごろまでに現在の35%から50%程度に増やす目標を掲げた。デジタルや脱炭素といった成長分野の学部設置を促す基金創設や理系学生への奨学金拡充など、理系重視の政策が目白押しだ。文部科学省などは8月までに政策の工程表をつくり、実行に移す。
政府が理系人材の育成を強化するのは、デジタルや人工知能(AI)、脱炭素などの分野の人材が「日本の成長と発展に不可欠」と考えているためだ。一方で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、日本の理系人材の育成は遅れている現状がある。
「理系」が増えない日本
文科省などの調査によると、21年度の日本の大学の入学者のうち、理学、工学部の入学者の割合は約17%だった。OECD平均は約27%。近年、OECD加盟国の多くが理工系学部の学生を増やすなか、日本はほとんど変わっていないという。
また、大学の学部の卒業段階で見ると、理、工に加えて、農、医・歯・薬・保健などを合わせた理系分野の学位取得者の割合は、日本は推計で35%(20年度)。イギリスは45%(18年度)、ドイツは42%(同)、韓国42%(19年度)、アメリカ38%(17年度)。日本政府は今後5~10年で、この割合を50%にすることをめざすという。
ある元国立大学長の懸念
政府は理系を専攻する学生を「5割」にするという目標を掲げました。記事の後半では、この目標についての賛否を紹介します。「文系が理系の刺し身のツマ程度になることで終わるんじゃないか」と指摘する元国立大の学長も登場します。
政府は、大学が成長分野に関する学部への再編を行う際、実験設備などの初期投資に使える基金を創設し、財政的な支援を行う方針だ。理系分野の学部設置には、現在の基準で、約20億円の実験施設と設備が最低限必要とされているが、この基準も緩和する。デジタル分野では、これまでの理工系学部の「重厚長大」な実験設備などは必要なくなるためだ。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル