親からの壮絶な虐待を生き抜いた「虐待サバイバー」と呼ばれる人たちが、各地のイベントで自身の体験を語り始めている。当事者しか話せない経験を伝えることで、新たな虐待の発生を防ぐとともに、いまも続く後遺症に対する公的支援の必要性を訴えることが目的だ。(重政紀元)
「母からずっとたたかれてきました。いまも生きているだけでつらく、薬なしでは感情をコントロールできません」
千葉県市原市内で5日あった「子ども虐待防止策イベントin千葉」。20~50代の男女4人が幼少時から受けた虐待について約30人の参加者に語った。家族構成や虐待で生じた心の病、障害を隠さずに打ち明けた。
その1人の20代の女性は「体に傷は残っていなくても心はぐちゃぐちゃのまま。これ以上、自分のような人を増やしたくない。同じような境遇の人のために何かしたかった」と話す。
主催したのは、虐待体験者100人の手紙をまとめた書籍「日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?」の編集を担当したライターの今一生さん(56)=市原市=。3年前から行っており、今年は全国7カ所で開いた。
重視しているのは当事者の声だ。毎回3~4人が虐待を受けた体験を語る。「自治体主催のイベントは、医者や児童相談所の職員など専門家が一方的に話すものばかり。当事者の視線がもっと必要だと思った」(今さん)
全国の児相が2020年度に相談対応した18歳未満の子どもへの虐待は過去最多の20万5029件。前年度比5・8%増で、調査開始から30年連続で増えた。児相職員の増加などの対策はされているが、抜本的な解決は遠い。
今さんは「性的虐待を始め、表に出せない子どもたちはもっといる。虐待体験者を加えた相談体制や、短期養護者制度、後遺症に対する支援策を早く整備する必要がある。そのためにももっと体験者の声を聞くべきだ」と話す。
「子ども虐待防止策イベントin千葉」の参加者に過去の虐待の体験と現在の思いを聞いた。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル