地方に元気がないといわれる。人口減少と高齢化が進み、あらゆるものが大都市に集まる状況は止まりそうにない。なんだか、やるせない。和歌山県田辺市の集落で約30年、住民主体で地域づくりを担ってきた玉井常貴さん(77)を訪ねた。
新大阪から特急列車で2時間半弱、JR紀伊田辺駅に着いた。玉井さんが活動する上秋津地区は、車で約10分、平野を抜けた先のなだらかな丘陵地にあった。熊野三山につながる熊野古道中辺路(なかへち)の玄関口にあたる。
9月上旬、上秋津の中心部にある元小学校の木造校舎で玉井さんと待ち合わせた。そこは「秋津野ガルテン」と呼ばれるグリーンツーリズム施設で、玉井さんの活動拠点の一つ。どんなことをしているのか。
「地元でとれた野菜などを使ったバイキングレストランをやっています。まさに地産地消を実践する場。収益を生み出すだけでなく、地元の雇用の場にもなっています。お菓子づくりの体験工房や農業体験の受け入れ、宿泊施設もあります。部屋はゆったりとしていて長期滞在もできる造りです」
コロナ前の2019年度は、年間約8万人が秋津野ガルテンを訪れた。上秋津の人口は約3200人。その25倍にあたる。「関係人口を増やすことが、地域の活性化につながります。地元の産業はみかん栽培をはじめとする農業。この地域資源を生かす地域づくりをしているのが、秋津野ガルテンなんです」
ガルテンは、ドイツ語で庭を意味する。その名の通り、敷地はクスノキなど緑に囲まれている。散策できる遊歩道もあり、喧噪(けんそう)とは無縁だ。木造校舎は改装したとはいえ、階段や廊下を歩くとミシミシと音が鳴り、タイムスリップしたようだ。
外国人観光客やIT企業も
コロナ禍で急速に広まったテレワークだが、木造校舎には昨年、通信環境を整えた「ワーキングスペース」を整備した。その前年の19年には、敷地内に木造2階建てのサテライト型オフィスも設けている。
「外国人観光客が訪れるよう…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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