東京都内の駅ビル。その運営会社に勤めてまもなく5年になる男性(64)は、仕事を辞めたいと毎日のように考えてしまう。
元消防士。60歳で定年退職し、あっせんされた今の会社に再就職した。
ビル内の設備を見回ったり、入居するショップから相談を受けたりする仕事だが、着任初日から辞めたくなった。男性ばかりだった前職と違い、周りはほとんどが女性で、何を話していいのかわからない。上司の課長には「お客様」を迎えるお辞儀の角度を細かく指導され、いらついた。
「言い方がすごいきつい」と駅ビルに入るショップ店員から会社に苦情を言われたこともある。身に覚えはあった。シャッターを下ろす場所に物が置いてあったため、店員に「ダメだ」と注意した。「言い方を優しくしましょう」。そう注意され頭を下げるしかなかった。
未婚の1人ぐらしで、お金には困ってはいない。それでも辞めないのにはワケがあるという。
「男のプライドがあるから」。男性は記者の目を見つめ、真剣な表情でそう言った。
「途中で辞めればかっこわるいじゃん。前職の看板にも傷をつけることになるって思っちゃうんだよな」
「男らしさ」とはいったい何なのか。それがもし人を傷つけ、自分を苦しめていたら。11月19日の国際男性デーに合わせた連載第1回です。
1959年、東京都立川市生…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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